女子トイレ使用で勝訴の経済産業省・性同一性障害職員が語る「割り切れなさ」

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隔離するな

「私は背広を着てネクタイを締めて男性職員として働いていましたが、2010年のある日を境に女性の服を着て出勤しました。職場の皆さんはびっくりするだろうとは思いました」

 職場の担当職員と話し合った結果、トイレの使用制限を告げられたわけだが、

「私が求めたのは、毎日使うトイレのこと。女性として勤務している人と一緒にしてほしい。それだけです。女子トイレは個室なので性器の形状が見えることもあり得ませんから。新たにトイレを作れとか、下半身が露わになるシャワー室も一緒に使いたいとは言っていない。シンプルに、“平等にしろ”“隔離するな”ということです」

 当世は、多くの民間企業で職員の求めるような対応がとられ、共用トイレを設置する会社もある。先のセクハラ発言は問題外として、経産省も、女子トイレの使用を完全に禁じていたわけではない。

 ある中央官庁の職員は、

「民間企業なら共用トイレを備えればいいが、役所ですから税金を使うことになる。経済合理性からも、“一人のためになぜ”となり、難しいのです」

 次に経産省の30代女性職員に訊ねると、

「ふだんも女性として生活している人ですから、女性トイレをふつうに使っても構わないと思います。ただ、違和感がまったくないということもないですが……。この違和感から変えるべきかなと感じたりもします」

 と胸の裡を明かす。こうした点について職員本人は、

「やはり、隔離措置と感じています……」

 実に複雑で難しい問題なのである。

週刊新潮 2019年12月26日号掲載

ワイド特集「この世界の片隅に」より

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