栄和人氏、監督復活のウラのウラ お粗末だったテレビメディアの報道

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罪深いテレビメディア

 パワハラ報道の理不尽について筆者はWEBサイト「ビジネスジャーナル」に何度か書いたが、伊調選手を批判する部分は「ネットが炎上する」とかなり割愛された。告発側は、まさにこの「五輪4連覇の国民的ヒロインなら誰も批判できない。世論は味方する」を利用した。筆者は『週刊金曜日』にも書き、心配する栄氏を説得して昨年10月に『週刊新潮』で栄氏の独白録を書いた。さらに今年6月に発刊された『令和日本のタブー』(宝島社)に詳細に報じた。

「伊調の指導をするな」の発言は2010年のモスクワで世界選手権の時だが、栄氏は「『全体練習の時間内に伊調選手の指導をすることはやめてもらいたい』と言いました。合同合宿中や世界選手権など男女同時の大会では二人だけで外出し、他のコーチらが探し回ることも度々でした。二人の蜜月に、女子選手からも『目のやり場に困る。気が散って練習に集中できない。何とかしてほしい』という訴えがあった」などと打ち明けてくれた。

 伊調選手の、妻子ある田南部コーチとの勝手な行動やわがままに協会も手を焼いていたのだ。栄氏が注意するのは当然だった。

 騒動のさなかに栄氏の脇はやや甘かった。しかし伊調馨と川井梨紗子の五輪切符争いが注目された昨年6月の全日本選抜選手権の直前、国民注視の謝罪会見を乗り切り、極度に心配性な栄氏は安堵から気が緩んでしまった。試合中に芸能人と昼食に出たり、夜にキャバクラ行脚をしたのは褒められたことではないが、いかがわしいことをしていたわけでもない。筆者は監督解任するほどではないと思ったがそこは女性学長ゆえか? 自らの苦い経験からも筆者は栄氏に「監督解任は仕方ないが、絶対に大学に辞表を出すな」と再三、栄氏に忠告していたが学内外の圧力に抗することができず8月に辞表を出してしまっていた。一方、フジテレビはレスリング協会に謝罪に訪れたという。東京五輪取材で不利益を被らないためだろうが、謝罪すべきは栄氏に対してのはずだ。

 今年になって、愛知県の契約アドバイザーとして子供に教え、谷岡学長の計らいで至学館大学の道場にも少しずつに戻り「俺ももうちょっとの我慢だね」と筆者に語っていた栄氏。先般の監督復帰ですぐに祝辞を伝えると電話の向こうで「嬉しいよ、頑張るよ。学長は男だよ」と大きな声で歓喜していた。「学長は男」は笑えたがやる気がみなぎっていた。

 谷岡学長も昨年春、「伊調さんは選手なんですか」の発言で叩かれていた。伊調はこの時点で選手登録していなかったがメディアはこの発言だけ意図的に強調していた。栄氏は自らを「クビ」にした谷岡氏を最後まで信じた。一方「栄和人という男が絶対不可欠」と考えていた谷岡氏は戻すべくタイミングを計っていた。

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