栄和人氏、監督復活のウラのウラ お粗末だったテレビメディアの報道

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「堕とされたヒーロー」が帰ってきた。日本レスリング協会元強化本部長の栄和人氏(59)が、12月半ばに駒沢体育館で開かれた全日本選手権で至学館大学の監督として姿を見せた。

 土性沙羅と登坂絵莉の五輪チャンピオンOBが敗れる中も、「マットサイドに立つのはリオ五輪以来」という栄氏は声を嗄らし、指導している現役を次々と勝たせ、囲んだ報道陣に弾んだ声で「生きがいを感じる」と語った。追い上げられそうになりながら試合途中、栄氏のアドバイスを受けて猛然と突き放して女子65キロ級で優勝した同大学の類家直美選手は「タックルも自信もっていけと言われて頑張れました」と感謝した。

 昨年6月、「泣いて馬謖を斬った」(栄氏監督解任)谷岡郁子学長は監督復帰に当たり「栄さんに戻ってほしいという声が強かった」とコメントした。今年9月の世界選手権(カザフスタン)など不甲斐ない成績に、保護者らも危機感を持っていた。一方で「早すぎる、反省が足りない」「伊調馨選手に直接謝罪せよ」の世論がある。だがメジャースポーツとは言えないレスリングの世界を知る人などごくわずか。世論の根拠はマスコミ報道だ。

 はっきり言おう、昨年、「バイキング」「直撃LIVEグッディ」などのフジテレビを中心としたテレビメディアが「栄和人はとんでもない」「伊調選手が可愛そう」の世論を煽ったため国民は誤った情報を刷り込まれたままでいるのだ。

 昨年1月、「栄氏が伊調馨選手の練習を妨害している」などの内容の告発状が内閣府に出された。週刊文春が大々的に報じ「パワハラ騒動」に火が付いた。しかし、最大の被害者のはずの伊調馨は「告発状作成に関与していない」上、古い話ばかりをなぜ蒸し返すのか不思議だった。素朴で飾らない栄氏を現役時代から知る筆者は「おかしい」と直感した。

 テレビで盛んに栄氏を難じていたのが、かつて栄氏がバルセロナ五輪の代表争いを演じた安達巧氏だったことは悲しかった。名勝負は筆者も取材していた。

 少し取材すると彼の背後にいる「福田(福田富昭会長)体制」を転覆させたい協会内外の「クーデター勢力」が透けてきた。当時の副会長・松浪健四郎氏(日本体育大学理事長)ら元国会議員や国会議員、専修大関係者ら。福田会長は女子レスリングを五輪種目にするため尽力しアテネ五輪で実現、栄氏は見事に期待に応えてこれまで11個もの金メダルをもたらした。だが彼らは東京五輪を前に、栄氏と伊調馨の「不仲」を利用して至学館大学から女子レスリングのヘゲモニーを取り、協会の「金銭的不正」をねつ造して福田氏や栄氏が実らせた果実を奪いたかったようだ。とはいえ権力闘争はどの世界でもある。指弾されるべきは、視聴率が取れる「ヒーローの転落」を告発側一辺倒で面白おかしく報じて恥じないフジテレビに代表されるテレビ局だ。

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