秋元司議員の逮捕を目指す森本宏特捜部長の「狂気」と「出世」

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「抹殺する」

 先の検察関係者は続ける。

「森本さんには“コンピューター付きブルドーザー”と呼ばれた田中角栄のような緻密さと勢いを感じます。大手ゼネコンのリニア談合に文部科学省の汚職、日産ゴーン会長の特別背任。部長就任以来、次々と大事件を手がけて剛腕ぶりを見せつけてきた。議員を挙げれば、政官財すべてにメスを入れたことになる。是非とも逮捕したいだろう」

 ちなみに、特捜部のヒラ検事時代にはこんな逸話も。

「福島県知事(当時)の収賄事件で、知事の実弟を取り調べたときのこと。“知事は日本にとってよろしくない。抹殺する”と実弟に凄む“狂気”も垣間見せました。強気の捜査で鳴らして“特捜のエース”となった一方で、法務官僚からの評価も高い。法務省の刑事局総務課長といった重要ポストも経験し、エリートとしてのバランス感覚もある。捜査と法務行政双方に精通した稀有な存在で、検事総長候補の最右翼です」

 ただしそのキャリアは異例のものになりそうだ、と法務省関係者が話す。

「珍しいといえば、森本さんは名古屋大学卒。検察トップになれば初となります。部長3年目突入もきわめて異例の長さです。最長2年が目安なので森本さんは今年、検事正で地方に出るはずでした。でも出なかったのは、ゴーンの裁判が決着を見ていないのと今回の議員案件があったからだとされています」

 それらの案件にメドがつけば法務畑の出世街道に戻ることもある。

「通常、“総長ルート”は法務省人事課長などを経て、地方の検事正、東京地検次席とキャリアを重ねる。それで総長一歩手前のポスト、東京高検検事長にたどり着く。ですが森本さんに限っては、法務省と検察庁の双方で“政治との距離が近くなる法務省には戻さず、地方と東京の行き来だけで昇進させよう”との意見が強まっているんです」

“狂気の特捜部長”が出世街道を突き進む先に、「最強の捜査機関」復活があるかもしれない。

週刊新潮 2019年12月26日号掲載

ワイド特集「この世界の片隅に」より

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