完敗だった韓国戦 “戦えない選手”がいた不甲斐なさ、そして一番の問題点は?

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全く存在しなかった「ゴールの予感」

 スカウティングをするのは当然として、それを練習で選手に落とし込んでも、実際の試合ではその通りに行くとは限らない。そこで選手の「対応力」をテストする。そんな狙いが、格上の韓国を相手にしても今大会のテーマだったのかどうか詳細は不明だが、韓国戦後には記者会見で次のように試合を総括した。

「まずはこの試合に勝つために準備しました。引き分け狙いではなく、アグレッシブに戦おうとピッチに送り出しました。優勝できずに残念に思うし悔しいです」

 森保監督は唇を噛みしめた。「韓国の圧力に戦える選手と戦えない選手がわかったのではないか」という記者の指摘に対し、「戦える選手、チームコンセプトを、勇気を持って実践できる選手がわかったことは収穫になりました。選手の個の力を見られて、痛い思いをしたけど今後につなげたい」と「戦えない選手」がいたことを否定しなかった。

 たとえ優勝を逃したとしても、選手の「対応力」を見極めるために韓国戦はオープンな打ち合いを選択した――結果的には失敗したが――のであれば、森保監督はかなりの策士と言える。

 目標はあくまで東京五輪でのメダル獲得であり、カタールW杯のアジア予選突破だ。その通過点として、森保監督はトライ&エラーの試行錯誤の最中かもしれない。

 それでも一抹の不安が残る。田嶋幸三JFA会長(62)は「メダル獲得を期待していますが、金メダルとは言っていません」と言っていたが、もしも東京五輪で森保監督がメダル獲得を逃せば、その先も日本代表の監督を続けられるかどうかということだ。そうなれば、来夏は一気に解任論が吹き出しかねない。

 改めて韓国戦を振り返ると、一番の問題は「ゴールの予感」がまるで漂わなかったことだ。単発攻撃しかできず、初シュートは前半15分、鈴木武蔵が左サイドで反転しながら放ったシュートの1本だけ。後半40分にゴール前のこぼれ球を拾った畠中槙之輔のミドルシュート大きくバーを越え、43分の森島司の左サイドからのカットインシュートはクロスバーをかすめた。

 後半は韓国がカウンター狙いのため自陣に引いたことで、日本がボールを保持して攻め込む場面が増えたものの、サイド攻撃にこだわりすぎた印象が強い。あえて収穫をあげるとすれば、交代出場から果敢に1対1の勝負を挑んでクロスをあげた相馬勇紀(22)[鹿島アントラーズ]のプレーくらいだろう。

 ゴールを奪うためには、まずはシュートである。韓国の先制点もミドルシュートの一撃だった。それに比べて日本はシュートが少なすぎた。田中碧がドリブルで突進してミドルを狙える位置でも、シュートではなくドリブル突破でペナルティエリアに侵入しようとして阻まれたシーンには、歯がみせざるを得なかった。

 苦し紛れのシュート3本ではノーゴールでも仕方ない。佐々木は「シュートの回数が少なかった。チームとしてシュートの形を作れなかった」と悔やめば、期待の上田綺世は「ゴールを取れなかったということが、僕は悔しかった。そこでしかないと思います。一瞬の隙を含めてシュートを打てるスペースがあれば打とうと思っていたのですが、相手もなかなかそんな隙を見せてくれませんでした」と脱帽した。

 日本代表とU-22日本代表の現在地を知ることはできた――これだけが、E-1選手権の収穫だったと言えるだろう。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月22日掲載

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