BTSの推しに寄せていったらいつの間にかインフルエンサーになっていた23歳男性

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BTS似のビジュアルでBTSへの愛を語ったらバズった

 フォロワーが18万人を超えた昨年秋、とある事務所から声がかかりモデルとして活動するために韓国へ。だが、ほどなくマネジメントに疑問を抱き、契約を解消して帰国した。

 現在はSNSに特化した動画プロモーション事業を手がける「PICFEE」に所属。肩書は、「動画クリエイター」だ。2018年10月に同じくBTSのV似のインスタグラマーとして人気を集めていたKeiくんと「KING KNOCK」というユニットを結成し、ユーチューバーとしての活動をスタートした。

「当たるぞと思った動画が人気出なかったり、当たらないと思ったら、ヒットしたり」 

 例えば、「苦手克服企画」と称してバンジージャンプに挑戦したり、原宿の竹下通りで外来語をカタカナで言ったら、罰ゲームをしたり。しかし、テレビのバラエティを模した企画は視聴回数が伸び悩む。

 一方、予想外にバズったのは、BTSが新曲「Boy With Luv」をリリースした直後にミュージックビデオのリアクションを収めたものや、自宅の部屋にカメラを据え、SUGAのポスターに柏手を打って就寝してから起床後にメイクをする様子を収めた「モーニングルーティーン」など。BTSに絡めた、ごくささいな日常の様子を捉えたものだった。

「テレビで流行っている企画を真似してもウケない。やっている内容と自分たちの容姿のマッチ具合、あと見る人の共感が大事なんだと思います」

 130本の動画をアップし、総視聴回数7,801,148回(2019年12月17日現在)。動画での広告収入で生活できるため、カフェのアルバイトは辞めたという。

「月によっては会社員のボーナスぐらい入ることもあります。そんなに頻繁にはないですけど(笑)」

意外にも地味で孤独な実生活

 顔が知られるにつれ、BTSのコンサート会場で声をかけられることが激増。だが意外なことに、動画の再生回数と反比例して、実生活は地味になる一方だと明かす。

「昔は新大久保にもよく行っていたけれど、今はゼロです。ご飯食べているときも視線を感じるから。彼女を作りたくても作れない状況があるというか(笑)。仕事以外は、毎日家でゲームやってます」

 インスタグラム、YouTube、Pococha。ネットの世界で流行の波を乗りこなす注目のインフルエンサーの私生活は、意外にも孤独だった。11月末には、KING KNOCKは「やりたいことが異なるから」という理由で突然解散。Kenjiくんは事務所に残りつつ、広いネットの大海原で再びソロで勝負することになった。

「いま一番気がかりなのは、BTSが兵役に行くこと。自分が好きな人がいなくなるって感覚がほぼ初めてなんで、メンタル的に耐え抜いていけるのか。いない間、何をしたらいいのか……」

 BTSという推しへの愛をSNSで表現しているうちに、いつの間にかインフルエンサーになっていただけ。最近はもはや日常がバーチャルの世界になっていて、普段カフェに行くように動画配信のカメラの前に座っているというKenjiくん。そんな彼には、近い未来に実現したい目標がある。

「もともとインフルエンサーを目指してSNSを始めたわけじゃないし、実は自分は表に出るのはあまり向いていない気がして。興味があるのは、出たい人をプロデュースすること。自分が得た感覚を、インフルエンサービジネスに生かしてみたい。まだ具体的には言えないけれど、いま次の仕事の準備を進めているところです」

桑畑優香(くわはた・ゆか)
ライター・翻訳家。1994年「101回目のプロポーズ」の韓国リメイク版を見て、似て非なる隣国に興味を持ち、韓国へ。延世大学語学堂・ソウル大学政治学科で学ぶ。「ニュースステーション」ディレクターを経てフリーに。ドラマ・映画のレビューを中心に「韓国TVドラマガイド」「韓国語学習ジャーナルhana」「現代ビジネス」「AERA」「Yahoo!ニュース個人」などに寄稿。「韓流旋風」に映画コラム「ヨクシ! 韓国シネマ」を連載中。共著に『韓国テレビドラマコレクション』(キネマ旬報社)、訳書に『韓国映画100選』(クオン)ほか。

2019年12月20日掲載

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