新潟女児殺害事件「車ではね2度首を絞め殺害でも無期懲役」で裁判員制度の「自殺」
〈まれに見る悪逆非道な犯行〉
昨年5月7日、新潟市内で軽自動車を走らせていた小林は下校途中の小2女児に目をつける。そして、彼女を背後から撥ね飛ばし、激痛に顔を歪める彼女を車に連れ込む。その後、小林は少女の首を絞めて気絶させ、わいせつ行為に及んだ。意識を取り戻した少女が恐怖に震え、泣きじゃくりながら「頭が痛い、お母さんに連絡したい」と訴えると、再び首を絞めて殺害。そして、小林は少女の遺体を線路に放置し、電車に轢かせた。轢死体に見せかけようとしたのだ。
公判で検察が〈まれに見る悪逆非道な犯行〉と断じたのも頷ける話だ。
だが、新潟地裁は小林の犯行について、以下のような見解を示した。
〈計画性は認められない〉上に、同種の事件と比べて〈際立って残虐とまでは言えず、死刑は選択できない〉。〈遺族が先例にとらわれず刑を判断してほしいという思いを抱くのは至ってもっともだが、死刑が究極の刑罰である以上、慎重さと公平性は特に求められる〉。
とても小林の所業を子細に検討したとは思えない物言いである。森氏が続ける。
「この事件で判例至上主義的な判決が下されたことは残念です。わいせつ目的の幼児誘拐殺人事件は、件数が少ないため、死刑対象者が著しく増減することはありません。つまり、法の安定を脅かすことなく、市民感覚を死刑判決に反映しやすかった。今回のように踏み込んだ議論がないまま先例に従ったのでは、裁判員制度の“自殺”と言わざるを得ません」
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