感染した人間を死に至らしめる狂犬病ウイルスから回復した少女【えげつない寄生生物】

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 ゴキブリを奴隷のように支配したり、泳げないカマキリを入水自殺させたり、アリの脳を支配し最適な場所に誘って殺したり――、あなたはそんな恐ろしい生物をご存じだろうか。「寄生生物」と呼ばれる彼らが、ある時は自分より大きな宿主を手玉に取り翻弄して時には死に至らしめ、またある時は相手を洗脳して自在に操る様は、まさに「えげつない!」。そんな寄生者たちの生存戦略に、昆虫・微生物の研究者である成田聡子氏が迫るシリーズ「えげつない寄生生物」。最終回は「脳を乗っ取り凶暴化させる寄生ウイルス」の続編です。

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人へどうやって感染するか

 狂犬病ウイルスには人間を含めたすべての哺乳類が感染します。そして、狂犬病ウイルスは唾液中にたっぷり存在しており、感染した動物は凶暴性を増すため、人への感染は感染動物に咬まれたり、引っかかれた傷に唾液が付着して起こることがほとんどです。その他の感染経路の例としては、感染動物に目・唇など粘膜部を舐められて感染した例や、ウイルスに感染したコウモリが生息する洞窟に入ったことで、気道から狂犬病ウイルスに感染した例があります。

 ゾンビ映画のように狂犬病に感染した人間が他の人間を咬むことで感染した例はいまのところありませんが、狂犬病に感染していたドナーの角膜、腎臓、肝臓などを移植された患者が狂犬病ウイルスに感染した例があります。

感染してから発症するまでの時間

 傷口などから感染したウイルスは神経を伝って脳を目指して全身に広がりながら移動します。狂犬病ウイルスが体内を移動する速度はそれほど早くはありません。移動する速さは一日で数ミリから数十ミリと言われています。

 そのため、感染してから発症するまでの潜伏期間は、一般的に、脳から遠い部位を咬まれたほうが長くなり、発症率も低くなる傾向にあるようです。

 犬では、約80%が10~80日の潜伏期間を経て狂犬病を発症しますが、長い場合は1年以上かかる場合もあります。人間では、約60%が30~90日で発症しますが、なかには10日以内で発症したり、7年という長い潜伏期間を経て発症した報告もあります。

 ちなみに、症状が現れる前に狂犬病の感染の有無を診断することはいまだに出来ません。

人間が狂犬病を発症すると

 狂犬病の初期の症状は、熱、頭痛、吐き気、などインフルエンザに非常に似ていると言われています。そして、強い不安感、一時的な錯乱、水を見ると首の筋肉が痙攣する(恐水症)、冷たい風でも痙攣する(恐風症)、麻痺、運動失調、全身痙攣が起こります。その後、昏睡状態に陥り、呼吸麻痺を起こして死に至ります。

 狂犬病は「恐水病」とも呼ばれますが、これは神経がウイルスに感染することで過敏になり、水を飲もうとすると、水の刺激で反射的に強い痙攣が起こり、水を飲むことを恐れることによるものです。また、こうした症状は、水だけでなく光や風などの刺激でも起こります。しかも、このような症状が起きるときの意識は明瞭なため、強い不安と恐怖を伴うのが特徴です。

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