5-0で大勝の香港戦 森保ジャパンのゲームプランが嵌まった3つのポイント
日本伝統のストロングポイント
これらの得点に直接絡んではいないが、右ウイングバック相馬勇紀(22)[鹿島アントラーズ]のドリブル突破も5-0の大勝の原動力となった。
右サイドで香港の左SBツイ・ワンキット(22)[梅州客家]を何度もかわしてクロスを送り続けた。ゴールを決めた3人と同じく勝利に貢献した、陰のMVPと言ってもいい。
では相馬勇紀がなぜ、1対1の勝負でイニシアチブを握れたのか。それが第2のポイントである。
香港は初戦の韓国戦では、超守備的な5-4-1の布陣を採用した。韓国が4-2-3-1で、攻撃時は前線の4人のアタッカーと両サイドバック2人の6人、さらにはボランチも加われば7人が入れ替わり立ち替わり攻め込んでくる。それに対抗するため5人のDFで韓国の攻撃陣に対処しつつ、中盤の4人がスライドしてサイドバックの突進に蓋をしたり、自陣バイタルエリアでこぼれ球に対処したりした。
ところが日本戦でのパーテライネン監督は、日本の3-4-3に対し4-3-3を採用してきた。日本の攻撃は前線の3人と左右の両ウイングバック2人の5人で、CBのアウトサイド――渡辺剛(22)[FC東京]と古賀太陽(21)[柏レイソル]――は攻撃の起点にはなってもサイドバックのような攻撃参加はしない。
そこで1トップの小川航基は2人のCBが受け渡しでマークし、両サイドバックは日本のウイングバックに対処する。そしてパーテライネン監督が最も警戒したのが、中国戦で先制点を決めた鈴木武蔵とドリブル突破で中国DF陣を混乱させた森島司の2シャドーだったと推測される。このため3人のボランチのうち左右の2人が仲川輝人と田川亨介をマンマークで封じに来た。
そのプラン自体は悪くはない。日本の3-4-3に対して韓国戦のようにゴール前に人数をかけて守るのではなく、まずは厄介な2シャドーを封じて、そこからのカウンター狙いは理にかなっている。ただ、誤算だったのは両サイドバックが1対1で後手に回ったことだった。
本来なら仲川輝人はドリブル突破を、田川亨介はスピードを生かして相手の背後を急襲するプレーを得意とする。しかし前半は2人ともサイドではなく中に入ってウイングバックのためにスペースを作っていた。
その結果、特に前半は相馬勇紀がその恩恵を受けた。右サイドに張り、ノーマークの状態でパスを受けると、自分のリズムでボールを持ちながら左SBツイ・ワンキットと1対1の勝負ができた。常にイニシアチブを握りながら勝負ができたため、幾度となくワンキットを振り切りクロスを上げた。
ストレスを感じたのかワンキットは前半35分、悪質なバックチャージで相馬を倒した。イエローカードが出てもおかしくないプレーであり、前半で交代させられたのも当然と言えた。
試合後の森保監督は相馬について、「個で仕掛けることができて、相手の守備を切り裂いた。ウイングバックの役割を果たして、チャンスを作ってくれた」と高く評価した。そして仲川に対してもマンマークされていたが、「動き回らずに我慢してくれ」と指示したという。仲川がボランチを引きつけることで、相馬に2対1ではなく1対1の状況を作り続けた。相手の意図を読んだ上での「対応力」とも言える。
そして最後に、やはり川崎フロンターレの、経験豊富な大島僚太(26)と伸び盛りの田中碧(32)によるボランチの、緩急を使い分けたパスワークは見事だった。
これが勝因の第3のポイントである。2人はワンタッチ、ツータッチのショートパスを繰り返すことで攻撃のリズムを作っていた。中国や香港、そして韓国にもない日本伝統のストロングポイントとも言える。
日本はスタメン全員を入れ替えながら連勝で優勝に王手をかけた。18日の韓国戦に勝てば2度目の優勝が決まる。その試合に向けて誰をピッチに送り出すか、森保監督も頭を痛めていることだろう。「調子のいい選手、結果を出した選手は代えるべきではない」というのがチームスポーツの鉄則だ。
となると1トップはハットトリックを達成した小川航基が濃厚だろう。右ウイングバックの相馬勇紀、攻撃の起点となったDF渡辺剛も同様だ。
そして交代で2試合に出場した畠中槙之輔(24)[横浜F・マリノス]は、森保監督の信頼の深さがうかがえる。
難しいのは13日の練習中に負傷してチームを離脱した橋本拳人(26)[FC東京]のポジション、ボランチの人選だ。攻撃力を優先するなら大島僚太だが、守備を考えると田中駿汰(22)[大阪体育大学]という選択肢もある。軸を決めることによりボランチは組む相手も違ってくるので、悩ましいところだ。
果たして森保監督はどんな決断を下すのか。これも韓国戦の見どころと言っていいだろう。
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