「グランメゾン東京」を支配する三大原則 もっとほかのキムタクが見たかった……

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キムタク47歳はどこへ行く

「グランドメゾン」、実際に視聴率が悪いと囃されてるけど、ひょっとしたらハナっから事務所も局も、第一に目指していたのは数字じゃなかったのかも。“事務所として、局として、そしてギョーカイとして、キムタクを支えてきます”というメッセージを伝えることが最優先だったとか。

 視聴率を取りにいきたいのなら、「半沢直樹」のカタルシス(別名「水戸黄門」効果、あるいは「スカッとジャパン」快感)が生まれるよう、もっと歯ごたえのある悪党を登場させただろうし、ヒロインにだって定番感の強い鈴木じゃなく、キムタクより年若で最旬感のある女優を引っぱってきたでしょう。手はいくらでもあった。

 それをしなかったのか、できなかったのかはワタシにはわかりませんが、第8話までなんとかつきあってきて、今しみじみ思うのは、どうせ15%の数字を取れない/取らないのであれば、もっと落ち着いた、気楽なドラマに仕立ててほしかったなぁ、ということ。

 たとえば……パリの2つ星を潰したという前提はそのままでいいから、その後キムタクが目指すのはシンプルな料理、イージーな店で、舞台も田舎。ストーリーも“パリの仇を東京で討つ”式、かつRPGみたいな連続難所越えではなく、傷ついたり疲れたりのキムタクが美味しい料理、楽しい料理を通してゆっくりと、ひとりの人間として活き返るようなもの。

 北海道を舞台にしたら倉本聰モノだと誤解されるような、あるいはショーケン(萩原健一)最晩年の良作になった「鴨川食堂」(NHK BSプレミアム)のパクリだと批判されるような、そんなドラマでよかったんじゃないかという気もするし、どうしてもカネかけてゴージャスにしたいなら、新しい店を南ヨーロッパの田舎のオーベルジュにすればいい。

 だって、もったいないんですよ、「グランメゾン東京」。出てくる料理は美味そうに撮れてるし、料理してるキムタクも最近にないレベルでカッコいい。そこだけ見てる分には、「料理天国」から「チューボーですよ!」に至るTBS(&サントリー)伝統のグルメバラエティのような楽しさ、うまさがある。

 ストーリーの山谷は額縁程度に抑え、グランメゾンも東京も無縁の静かで呑気な世界の中で、キムタクと料理を存分に見せる。そういうドラマが覗いてみたかった。そこには、ビストロSMAPの木村クンでもなければ、総理大臣まで演じるヒーローでもなく、SMAP解散の戦犯でもない、つまるところキムタクではない、ドラマ放送中の11月に47歳になった木村拓哉が見えたんじゃないかなぁ。

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月15日掲載

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