将来介護してくれる人に迷惑をかけたくない…「介護脱毛」隠れたブームの背景

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身内の介護経験

 六本木の婦人科「アヴェニューウィメンズクリニック」の福山千代子院長は言う。

「確かに介護脱毛をされる方は最近、一定数いらっしゃいますね。そもそも、20年ほど前と比べ、介護に限らずアンダーヘアの脱毛をされる方が増えています。女性の間で脱毛が一般化したからこそ、介護脱毛も多くの方に受け入れられるようになってきたのだと思います。また、身内の介護を経験された方が増えてきたことも大きいと思います。医療の観点から言えば、下着を穿いていれば、衛生面の問題はないので、脱毛に大きなデメリットはありません」

 また、「四谷三丁目皮膚科」の山田美奈院長も、

「当院では『介護脱毛』を昨年から始めましたが、既に5~6名が施術を受けていますし、問い合わせは多く来ます。親の介護を経験したり、施設で介護の実態を見て、下の毛があると大変ということに気づいた方がほとんどです」

 脱毛の手法は、美容脱毛とまったく同じで、レーザー光線で毛母細胞の黒いメラニン色素を焼き切るというもの。そのため、白髪には反応しない。下の毛も髪の毛同様、50代以降になると白いものが混じってしまうケースがあるため、それ以前の施術が望まれるという。早めの対処が必要だ。

「当院でも40~50代の女性がほとんど。施術は2~3カ月に1度のペースで個人差はありますが、最低でも5~6回は来ていただく必要があります。費用は脱毛範囲にもよりますが、トータルで10万円前後になるでしょうか」(同)

 むろん、年齢を経るにつれて「下の毛」も薄くなるから、必ずしもすべての人に必要とは言えないものの、一考の価値ある“予防法”である。

 日進月歩。対処法から予防法まで、さまざまな手法が生まれつつある「介護と排泄」。

 排泄用具の情報館「むつき庵」代表の浜田きよ子さんが言う。

「私の母は糖尿病のため目が不自由でしたが、入院してもトイレには何とか自分で行っていました。しかしある日、ベッドから降りる際に膝を強くぶつけてしまい、看護師さんから“骨折でもしたら大変”と言われてオムツ使用になりました。ところが、それから母はどんどん弱ってしまい、たった1カ月ほどで亡くなってしまった。それだけが原因ではないでしょうが、母にとっては“排泄の世話をしてもらっている”という気持ちが、アイデンティティや生きる気力を削いでしまったのかもしれません」

 放(ひ)ることはすなわち生きること。臭い物にフタ、と目を背けていては済まないテーマなのである。

週刊新潮 2019年12月12日号掲載

特集「『下の毛』が深刻な問題という『介護と排泄』現場」より

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