13年間義母を介護した城戸真亜子さんが語る「介護と排泄」現場事情

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無気力状態

「排泄ケアは大きな苦労を伴います」

 と述べるのは、NPO法人「日本コンチネンス協会」でアドバイザーを務める、梶原敦子氏である。

「介護する側は、被介護者がトイレに行ける場合はもちろん、行けない状態でも、身体を動かし、シーツを替える身体的負担は大きい。介護する側が骨折してしまったという例も多く聞きます。また、食事やお風呂に比べて、排泄は時間がコントロールできない。家にいても出かけていても、昼も夜も常に気になります。夜中に眠れないことで悩む方はたくさんいる。そもそも、自分の親が排泄ケアを受ける状態になっていること自体を受け入れるのが辛いという方もいます」

 される側も同様で、

「局部や排泄物を見られることへの羞恥心や、申し訳ないという思いにさいなまれてしまう方がほとんど。ですが、その気持ちもだんだんと諦めに変わってしまって、無気力状態に陥ってしまう人もたくさんいます。認知症の方々の中には、オムツや汚れた下着をタンスの奥などに隠してしまう方もいるくらい。また、お年寄りの皮膚は非常に弱く、スキントラブルが起きやすいし、膀胱に菌が入り込んで尿路感染症を起こすなど、最悪の場合、命にかかわる病気をも引き起こすのです」

 する側/される側、そして、精神的/肉体的それぞれに大きなストレスとリスクを生むのが、介護の現場における「排泄処理」である。

 介護大国、日本では、それらを少しでも軽減するために、さまざまな工夫がなされている。現場事情を見ていこう。

排泄予測デバイス

 排泄を事前に察知できたら……そんな願いに応えたのが、「世界初の排泄予測デバイス」と謳う、「DFree」(写真1)である。

「現場の評価は高く、“失禁が減った”“入居者の自立に役立った”“夜間の労働量が減った”という声があり、とても手応えを感じました」

 と述べるのは、開発した「トリプル・ダブリュー・ジャパン」社の中西敦士代表である。

 超音波センサー部を下腹部に装着することで、膀胱の変化を捉え、その情報をスマホやタブレットに表示する。介護者はそれを基に、被介護者をトイレに連れて行ったり、尿瓶を当てたりして備えるのだ。

「介護現場における夜間のナースコールの4割はトイレに行きたい、という調査結果もあります。しかし、その中には、尿が溜まっている人もいる一方、気のせいという人もいる。DFreeがあれば、取るべき対応を判断することが出来ます。介護現場の転倒の4割程度はトイレに行く途中に起きる。排泄を予測することが出来れば、こうしたリスクも軽減できます。また、介護を受ける方にもメリットは大きい。介護現場では、夜間、1時間に1度は見回りをしていますが、その際にオムツのチェックで身体を触られることで眠りが浅くなり、起きてしまって徘徊する人もいる。それを防止できるのです」

 課題は肥満や身体の作りの関係で、測定がうまくいかない人がいること。そして、よりニーズの高い、排便のデバイスがまだ開発途上ということか。価格は5万円超。今後の発展に期待、である。

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