「串カツ田中」のサブスク“田中で飲みpass”が好調のワケ 忘れてはならないホットペッパーの教訓
Netflixの売上は年1・7兆円
串カツ田中が「サブスクリプション」を導入すると、月の来店者数が1・84倍に増加した――。飲食業界でなくとも大注目の数字に違いない。
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このサブスクリプション、わが国では「サブスク」と略されることが多いが、すっかり日本語として定着した感がある。改めて原語の「subscription」を英和辞書で調べれば、もともとは雑誌などの「定期購読」を意味するそうだ。
それが日本で「サブスク」と使われる場合は、「定額制」と解説されることが多い。成功例の筆頭に挙げられるのは、動画配信の「Netflix」や「Amazon Prime Video」、音楽配信の「Apple Music」や「Spotify」といったところだろう。
いずれも数百円から千数百円の月額料金を支払えば、映画や楽曲が見放題、聴き放題になるというサービスだ。その成長は著しい。例えばNetflixなら、1997年にカルフォルニア州で30人の従業員でスタートしたが、2017年の従業員数は5400人。売上高は約1兆7200億円という具合だ。
少子高齢化で日本の国内市場は縮小を続けている。ビジネスにおける成功例が、そうそうあるわけではない。“溺れる者は藁をもつかむ”ではないが、サブスクが救世主のような扱いを受けているのは事実だろう。
Amazonで「サブスクリプション」を検索すれば、20冊近いビジネス書や雑誌が表示され、関心の高さが伺える。そして真面目な読者ほど、成功例だけでなく、失敗例も把握したいと思うものだろう。
東洋経済ONLINEは6月25日、「『つながり』なきサブスクリプションは失敗する」とのタイトルで、川上昌直・兵庫県立大学教授の署名原稿を掲載した。川上教授は「『つながり』の創りかた――新時代の収益化戦略 リカーリングモデル」(東洋経済新報社)の著者でもある。
この記事に次のような記述がある。「サブスクを始めれば、わが社の業績は回復する」と安易に考えるビジネスパーソンを諫める内容だ。
《今のビジネスの構造を変えずに課金のみをサブスクリプション「的なもの」に変えたとしても、結局はうまく機能しないのです。
これは、最近よくニュースになる、月額料金を支払えば、コーヒーが飲み放題になる、ラーメンが食べ放題になるといった「定期券型サブスクリプション」の企業を見るとよくわかります》
川上教授が「定期券型」と名づけたサブスクリプションは、例えば「野郎ラーメン」の「1日一杯野郎ラーメン生活」が該当するだろう。税込780~880円のラーメン3種類のうち1日1杯が、月額税抜8600円で食べられるというものだ。
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