トラブル続く「楽天」の綻び 楽天市場は出店者から不満噴出、楽天Payは障害つづき…

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スピード! スピード! スピード!

 楽天の前身「エム・ディー・エム」が設立されたのは1997年の2月。その3カ月後には楽天市場はスタートしている。00年頃に参加していた元楽天テナント業者は、当時から“テナントいじめ”の風潮はあったと振り返る。

「ただ、いまのように社会問題化するほどではありませんでした。楽天が我々に強気に出るのは、ネット通販という特別な事情もあると思います。そこが“リアル空間”のテナントとの違いですね」

 スーパーやデパートとは異なり、顔を合わせることなくテナント契約は解除できる。空いた“土地”に次の店が入るかどうかという心配も、ネット通販であれば基本的にない。必然的に、テナントは楽天に対して立場は弱くなってしまうというわけだ。

 では、楽天の内側はどうなのだろう? 同じECサイトでも、Amazonについては、過酷な労働実態がメディアで報じられているが……。楽天の技術畑で働いていた元社員は、基本的には古巣に“好意的”だ。

「2010年に三木谷さん(浩史・会長兼社長)が打ち出した社内英語公用語化などは、社内外から批判されましたね。けれど、長期的には成功だったと思います。変な根回しなど日本的なやり方がなくなり、海外の情報も入りやすくなりましたから」

 ただ、こうした取り組みに振りまわされているフシもあるようで、

「昨年、『楽天モバイル』を設立し移動体通信事業者に参入したことで、新人は配属先に関係なく、基地局を増やす業務をさせられています。昨年末には1万7000人だった従業員数も、今年になって1万9000人と急激に増えました(9月時点)。社員の人材管理を担うマネージャー職の負担が増えすぎ、逆にマネージャーが辞めていくという事態になっていると聞きます。また、社内英語公用語化によって、およそ5000人の外国人が働いています。私が楽天を辞めたのは、外国人従業員とのやりとりが下手で、力を発揮できないと感じたから。とにかく『スピード! スピード! スピード!』がモットーの会社なので変化が激しすぎる。短期間で違う会社みたいになってしまうんです……」(同・元社員)

 携帯電話や電気、ペイ事業もはじめるなど、イケイケドンドンの拡張路線で楽天は成長してきた。だが、スピードを求めすぎて弊害も起きつつある。何より会社の根幹である楽天市場には、テナントの不満がうずまいている。創業から22年が経過した現在、徐々に綻びが見えつつあるようだ。

角田裕育(すみだ・ひろゆき)
ジャーナリスト。兵庫県神戸市出身。北大阪合同労働組合青年部長、ミニコミ誌記者などを経てフリーに。著者に『セブン-イレブンの真実~鈴木敏文帝国の闇~』(日新報道)、『教育委員会の真実』(宝島社)。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年12月2日掲載

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