滝沢カレンにMatt、叶姉妹……いま求められる「空気を読まない」賢さとは

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滝沢カレンにMatt、叶姉妹……あえて「空気を読まない」からこその賢さ

 例えば滝沢カレンやMattである。彼女たちも、バッシングから一周回って人気者になったタイプだ。壇蜜と同様、「実は賢い」と評価されているのではないだろうか。

 出てきた当時は変な日本語とタメ口で、ローラの亜種的ハーフタレントの一人でしかなかった滝沢カレン。自分の顔に対する強すぎる美意識と、度が過ぎた写真の加工で気味悪がられていたMatt。でも今や、2人ともバラエティにひっぱりだこだ。滝沢の変な日本語も、「Matt加工」と呼ばれる写真加工も、唯一無二の売りになっている。

 自分のこだわりを追求するプロ意識というのはもちろんだが、ポイントは他人を悪く言わないというお行儀の良さではないだろうか。空気を読んだ上で、相手を茶化したりプロレスをしかける「悪役やバカになれる」賢さというのは、少しずつ過去のものになっている気がするのである。

 他の例で言うと、叶姉妹も同じである。かつては疑惑の過去などバッシングが絶えなかったが、その美意識あふれる言動やコスプレ姿は、憧れの対象へと変わった。自分のこだわりは徹底しつつも、相手の背景や立場も尊重できる。そんな姿勢が再評価されている。

 空気を読めるからこそ、キャラに徹することは本当に賢いのか。むしろ滝沢やMatt、叶姉妹たちには、「他人にそこまで興味がない」という強さすら感じる。人は人、自分は自分。だから、みんな違ってみんないいんだよ。そんな健全なたくましさが、彼らが持つ、新しい「賢さ」の正体なのではないだろうか。

 芸事の世界では、「人を怒らせたり泣かせたりするのは簡単だが、笑わせるのは難しい」と言う。相手との距離感やタイミング、言葉や表情ひとつとっても気は抜けない。でも一番重要なのは笑わせようとするのではなく、笑われてもいいと自意識を手放せる強さがあるかではないか。壇蜜もそうだが、滝沢やMatt、叶姉妹たちもどんな状況でも、「笑われてもいいわ」と自身の芸を差し出せる経験値とおおらかさを感じる。その積み重ねが、賢さと映るのだろう。

 空気を読む賢さから、空気を読まないからこそ生まれる賢さへ。手探りでひとつの正解を出すのではなく、ひとりひとりが生み出す別解もアリ、とされる世界は楽しそうだ。少なくとも、おいしい空気が吸えそうな気がする。滝沢らが活躍しているうちは、きっと安泰だろう。

(冨士海ネコ)

2019年11月28日掲載

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