「防犯カメラ反対論者は犯罪者の味方だ」 作家・百田尚樹氏が“人権派”を叱る
無事、被害者が保護され、容疑者が逮捕されてとりあえずの解決をみた大阪小6女児誘拐監禁事件。被害者が無事だったことは良いにしても、もっと早くに解決できたのでは、という指摘も一部に出てきている。たとえば大阪から栃木まで電車移動ということならば、駅等の防犯カメラに映っているはずで、それをきちんと追えば自然と足取りは辿れたはずだ、という見方である。
実際に、発生直後から周辺の防犯カメラを調べることで解決に至ったケースは今や珍しくない。記憶に新しいところでは、秋篠宮家の悠仁さまの中学校の机に刃物が置かれた事件では、学校から駅までの防犯カメラを追うことで、犯人をスピード逮捕できている。
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今や防犯カメラが犯罪捜査に大きな役割を担っていることは否定できない事実だろう。
もっとも、こうしたカメラの設置に抵抗感を示す人やメディアがかつてかなり多かった。
「繁華街に『監視の目』、急増する防犯カメラ――プライバシー保護に不安」というのは毎日新聞2003年2月24日記事の見出し。記事では犯罪の抑止効果は認めながらも「監視社会になる」と懸念する市民団体の声を紹介している。
この種の「懸念」はある種の新聞が防犯カメラを取り上げる際の定番だ。
「社説 '03夏視点 防犯カメラ 便利でもなし崩しは駄目」(2003年8月9日 毎日新聞東京朝刊)には、こうある。
「民間が設置した防犯カメラについても、野放し状態でよかろうはずがない。東京都杉並区などで条例制定の動きもあるが、監視社会とどのように向き合うか、市民それぞれの切迫した問題として論議の輪を広げていきたい」
「(記者有論)不明高齢者と監視社会 人の縁から、電子の網へ」という署名記事を掲載しているのは朝日新聞(2010年9月2日)。この記事には記者の日常にまつわる警戒感が率直に綴られている。
「今の世の中、普通に市民生活を送るだけで様々な場所に行動の『記録』を残すことになる。
まず、自宅の集合住宅の玄関を出るまでに、防犯カメラの目がこちらをにらんでいる。コンビニで電子マネーを使い、改札をIC乗車券で通過すれば電子記録が残る。駅にはもちろんカメラがあり、車を運転すればETCやナンバー読み取り装置が待ち構える。携帯電話は電源を入れるだけでアウトだ。(略)
安心、便利、快適、効率。設置理由は違っても、個人の行動を記録する機器はちまたにあふれている。いくら人の目を避けても、張り巡らされた電子の網をかいくぐるのは難しい」
なぜこの記者の方が、防犯カメラに「にらまれている」と感じるのか「電子の網をかいくぐ」りたいと考えているのか、真意は定かではない。
同様のスタンスは朝日新聞「防犯カメラ、進化止まらず 3600万人を1秒で検索・歩き方識別」(2012年6月3日)という記事にも見られる。渋谷駅での刺傷事件に防犯カメラが活用されたことを紹介しながらも、その進化を無邪気に讃えたりはしない。
「無意識のうちに自分の行動を記録され、誰だか分からない相手に監視される。そんな日常が現実になりつつある」
としたうえで、「監視社会に懸念」を示す識者のコメントを紹介している。
こうした新聞の定番である「懸念」「警戒感」と、一般人の感覚は少し乖離があるかもしれない。現在、どちらかといえば、防犯カメラに「にらまれている」と思う人よりは、「守られている」と感じている人が多いのではないだろうか。
作家の百田尚樹氏は、新著『偽善者たちへ』でこのように述べている。
「昔、町や店に防犯カメラを設置しようという動きがあったとき、人権派のジャーナリストや文化人がこぞって反対しました。
『監視社会になる』『プライバシーの侵害だ』というのが理由ですが、私に言わせれば、『人権病』にかかった発言としか思えません。
たしかに知らないうちに自分の姿が撮影されているのは気持ちのいいものではありませんが、水着を着ているところでもなく、お風呂に入っているところでもない、ただ通行しているところなど、別に撮影されてもどうということはありません。
歩いているところを撮影されて迷惑をこうむる人がいるとすれば、『犯罪者』以外にありません。つまり防犯カメラ設置に反対する人は、犯罪者を助ける行為をしているわけです。
防犯カメラによって犯人が判明して事件が解決したケースは数多くあると思います。私は今後もっと防犯カメラを町に設置するべきだと思います。(略)
最近のカメラの性能は素晴らしく、走る車のナンバーもわかるそうです。手に持ったお札が1万円札か千円札かも見分けることができるそうです。犯罪者たちはこの技術の進化を恨んでいることでしょう。彼らは心の中で密かに『人権派の人たち、頑張ってくれ!』とエールを送っているかもしれません」
監視社会への懸念が示されて久しいが、少なくともメリットとデメリットについての結果はもう出ているのではないだろうか。