芸能人が次々結婚! 夫婦生活で大切なのは「相槌」というアドバイス
壇蜜、オードリーの若林正恭、メイプル超合金の安藤なつ、イモトアヤコ……令和元年が終わろうとする時期になって、有名人の結婚報告が相次いでいる。どのような結婚生活が幸せなのかについては、人それぞれ考えがあるだろうし、これからそれぞれの夫婦で正解を見出していくのだろう。その見出す過程そのものが結婚生活だとも言える。
歌人で京都大学名誉教授の永田和弘さんは、著書『知の体力』で、伴侶だった歌人の河野裕子さんとの思い出をつづりながら、望ましい伴侶像について「自分をもっとも素晴らしい存在と思わせてくれる存在こそが、愛する相手であってほしい」と述べている。
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「一緒にいると相手のいい面に気づく、そのいい面に気づく自分がうれしく感じられる。その人と話していると、どんどん自分が開いていく気がする。お互いにそんな存在として相手を感じられるような関係こそが、たぶん伴侶と呼ぶにふさわしい存在なのに違いない」(同書より)
この永田さんの伴侶についての考え方については、以前もご紹介したことがあるのでここでは割愛。今回は新婚生活を始める人たちのために、永田さんが「相槌」の重要性を説いたところを引用してみよう。
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私の連れ合いが亡くなって、私にもっとも辛かったのは、私の話を聞いてくれる存在を失ったことであったかもしれない。私たち夫婦は、とにかくよくしゃべる夫婦であった。そして、今になって気づくことは、どうもお互いが正のフィードバックをかけあっていたような気がする。
相手の話を否定したり、ネガティブな反応をするのではなく、ポジティブに受け取る。その第一歩は、相手の話に興味を持つこと以外ではないが、『その考え、おもしろいよね』というベクトルでまず自分をその話のなかに組み入れられるか。それが話を聞く第一歩であろう。もし、相手の話に、さらにポジティブな反応を返すことができれば、これ以上ありがたい話し相手はないだろう。
もちろん客観的に、かつ冷静に判断して、的確なゴー、あるいはストップのシグナルを出せることは大切なことである。しかし、私たちが日常、話を聞いて欲しいと思うのは、たいていの場合は、まだ自分の考えがまとまっていないけれども、なんとか人に話す過程で、あるいは聞いてもらう過程で、その考えの輪郭をはっきりさせたいというような、いまだ〈考え〉としても形をなしていないような状態で投げかける場合のほうが、圧倒的に多いような気がする。
誰かを相手に、取り敢えず話すことによって自分の考えをまとめようとする会話、あるいは、話をしながら、まだ見いだせていない解決策をなんとか模索しようとする会話。意識するとしないにかかわらず、自分の考えを進めるために必要な会話というものがあるのである。
そんなとき、会話あるいは対話の相手に求めているものは、端的に言って「相槌」なのではないだろうか。「相槌」というのは、取り敢えず相手の意見を受け容れることからなされるものである。「なるほど」でもいいし、「おもしろいなあ、それで」と促すのでもいい。「それ、すごいなあ」なんて相槌を打ってくれれば、喜んでどんどん自分の考えが開いていく。歩幅もどんどん大きくなっていく。
そんなポジティブな「相槌」によって、次々に自分のアイデアが展開し、どんどん深く、あるいは高く伸びていくのを実感するとき、「俺って、結構いいこと考えてるよなあ」と、自分の能力というものの蓋が開かれていくのを実感するものだ。
自分が全的に受け容れられていると感じることができるとき、人間はもう一歩先の自分に手が届くものである。自分という存在が世界に対して開かれていくという体験である。
逆に、こちらが考えを述べ始めると、取り敢えずそれを否定するところから対話を始めるという人も結構いるものだ。否定的、あるいは消極的な反応しかできない人である。自分の意見を述べるというのは、自分で考え抜いた理論を堂々と展開するといった場面とは違う場合のほうが圧倒的に多いのである。
おずおずと意見を述べ、相手の反応を見ながらその軌道修正を行うというのが、日常の場面である。そんなときに、冒頭から、「それは意味無いだろう」とか、「そんなことは誰でも考えつくことだよ」とか、「それは無理だよ」、あげくに「ばかばかしい」などの反応が返ってきたら、もはや自分の考えのマグマに形を与えようという意欲が完全消滅することだけは確かである。
そんな常にネガティヴな反応しかできない相手とは付き合わないに限ると私は思っている。損である。否定的、消極的な対話の相手は、自分を小さくすることはあっても、自分の可能性を開いてくれる存在にはなり得ない。まずは受け容れることから始める。相談される場合だけでなく、日常生活における家族や友人たちとの付き合いのなかで、これが意識しないでもできるような自分にしておきたいものである。
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今回結婚した芸能人たちはみな、バラエティ番組などでの経験豊富な、いわばコミュニケーションの達人ばかり。きっと家庭内でも上手に相槌をうつことができるのではないだろうか。