桜を見る会騒動 私物化批判の「メディア」「野党」に刺さるブーメラン
人を呪わば穴ふたつ――。そんな諺(ことわざ)を持ち出すまでもなく、誰かを陥れようとすれば自らも報いを受けるのが世の習いである。
吉田茂政権下の1952年にスタートした桜を見る会は、毎年4月頃に東京・新宿御苑で開かれてきた。開催費用は公金、つまりは血税である。招待されるのは〈各界で功績があった人や功労者など〉とされる。
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だが、概ね1万人前後だった参加者は安倍政権下で一気に増加して、2014年度の約1万3700人が、今年度は約1万8200人に。支出額も約3千万円からおよそ5500万円に膨れ上がった。
加えて、「議員ひとり当たり4~5人、閣僚は20~30人」(自民党関係者)という「推薦枠」まで発覚。「功労者」ばかりでなく、与党議員の「後援者」を大量に招いていたことが取り沙汰され、ついに来年度の桜を見る会は中止へと追い込まれたのである。
とはいえ、安倍政権への追及を強める野党側が、こうした会の実情について「初耳」だったかといえば、そうではない。
桜を見る会は鳩山由紀夫内閣時代の2010年にも開かれていた。
「もう記憶の彼方だけど、大阪の友人夫妻を2組招いていた記憶がある。まぁ、何人でもお連れ下さいという感じだった」
とは石井一・元民主党副代表である。旧民主党に所属していた別の元代議士はこう明かす。
「当時から“推薦枠”があったのは事実です。事前に何人呼ぶかを党に報告してね。招待するのは基本的に地元の後援者ですが、実際には誰を呼んでも構わなかった。率直に言えば、桜を見る会は、“時の政権が後援者をもてなすイベント”なんです。共産党以外の野党が、安倍政権の“私物化”を批判するのは天に唾する行為でしょう」
国民民主党の玉木雄一郎代表も、旧民主党時代の「推薦枠」について「各議員4名だったと思うが、推薦枠があり、私自身もお世話になった方々を連れて行った」と発言している。改めて取材を申し込むと、
「各界で功労のあった方として、ご支援いただいた地元の商工会の会長などを推薦しました」
同じく、立憲民主党の枝野幸男代表も、
「若干の知己を推薦したと記憶している」
と答えた。言うまでもなく、「知己」とは〈(1)自分をよく理解してくれる人。(2)知合い。知人〉(新明解国語辞典)を指す。
つまり、招待客の曖昧な選定基準や推薦枠を問題視するならば、民主党から分裂した野党第1党と第2党のトップからして「同じ穴のムジナ」なのである。
1990年代から20回以上、この会に出席してきた放送プロデューサーのデーブ・スペクター氏は、
「そもそも、首相の主催なんだから、自分と縁のある人を招くのは当たり前。民主党政権の時は民主党の後援者が来ていましたよ。それを批判するのは“和田アキ子が『アッコにおまかせ!』を私物化している!”と叫ぶようなもの。アメリカやフランスの首脳だって式典には自分に近い人物を呼びますからね」
と一刀両断した上で、
「メディアにしたって毎年この会を取材してるし、お偉方が桜を見る会に招待されてるんだから、与党の支援者が大勢訪れていることは分かっていたはず」
と言うのだ。実は、メディアから激しく追及される安倍首相も、この矛盾に言及していたのである。
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