大学入試改革、国語と数学の「記述式」にも教育界から疑問の声 背後にベネッセの影

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バカげた制度

 実際、共通テストの国語の記述式問題の作問者が身近にいる大学教授は、

「“とにかくバカバカしい問題で、早くやめさせないといけない”と、ずっと口にしていて、観ていてかわいそうなほどです」

 と漏らす。入試改革を考える会代表で中京大学教授の大内裕和氏も、この記述式が「深刻な問題を抱えている」として、こう話す。

「大学が独自で行う記述式試験では、足きりなどで答案を絞ったうえで、10名程度の採点者がていねいに採点し、それでも予想外の解答が現れるので採点しながら何度も打ち合せします。でも、1万人が採点する状況では十分な打ち合せができず、同じ解答なのに採点者によって点数が異なる、ということすら起こりうるでしょう。すると大学入試の根幹が揺らいでしまいます」

 採点については、大手予備校の物理科講師である吉田弘幸氏も指摘する。

「採点者の質が確保できないので、だれでも採点できる問題になり、数学であれば途中式を書かせず、答えの数式を書くだけ。記述式にする意味がありませんが、答えを書くだけでも、たとえば三角関数に関する答え方は多様です。1万人のうち1人の採点者の認識が違っただけでも大きなミスにつながります。問える能力はマークシートとたいして変わらないのに、採点ミスの可能性ははるかに大きい。同僚たちとも、バカげた制度なので、なんとかやめさせないといけない、という点で一致しています」

 大内氏が再び言うには、

「なにより問題なのは、民間企業が行う採点の質を公的にチェックする仕組みがないこと。英語民間試験では、各試験団体に指示する権限が文科省になく、運営上の混乱を呼びました。記述式問題を採点する企業との関係についても、同様の問題を指摘できます。問題の漏洩や情報の目的外使用についても、ずっと懸念されています」

 ちなみに、50万人が受験するであろう記述式問題の採点業務を8月30日、61億円で落札したのは、ベネッセホールディングスの100%子会社、学力評価研究機構であった。

 ついでに言えば、

「記述式にかぎらず、大問がみな複数の文章で構成されるようになり、文章の論旨にじっくりと付き合う時間がない。筆者の言いたいことを捉える読解から、必要な情報を検索する情報処理へと、読むことの意義が変わってしまっている。インターネットを検索するようなもので、若者の読解力を落としてしまいます」

 と伊藤准教授は懸念する。

 ともあれ、採点者次第で点数が異なりうると懸念されるなか、今月5日、衆院文科委員会に参考人として出席したベネッセの学校カンパニー長、山崎昌樹氏は、採点者は「当然アルバイトもいる。学生か社会人かは問うていない」と説明。採点の質への不安はますます高まっている。

(2)へつづく

週刊新潮 2019年11月21日号掲載

特集「『国語』『数学』記述式問題の解けない謎 『大学入試改革』何故すべての道は『ベネッセ』に通じる?」より

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