大学入試改革、国語と数学の「記述式」にも教育界から疑問の声 背後にベネッセの影
「大学入試改革」何故すべての道はベネッセに通じるのか?(1/2)
英語民間試験に続いて国語と数学の記述式問題も槍玉に上げられ、大学入試改革自体が大炎上の様相である。50万人が対象の記述式などナンセンスだというのが、大方の一致した見解だが、その採点をはじめ入試改革の全方位に、なぜかベネッセが関わっていて――。
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大学入学共通テストに導入されるはずだった英語の民間試験は、降って湧いた「身の丈」発言で問題が知らしめられた結果、見送られた。すると野党は続けて、やはり2020年度から共通テストに導入予定の、国語と数学の記述式問題に、ここぞとばかりに攻撃の矛先を向けている。
国を挙げての大学入試改革が、どこもかしこも不備ばかりというわけもあるまい、と思った方もいるだろう。しかし、明治大学文学部の伊藤氏貴准教授は、
「私も長らく、大手予備校で模試を作っていましたが、50万人もが受ける記述式の試験なんて100%無理。そんなオーダーを受けても絶対に作れませんから、断るしかありません」
と断じる。なぜか。麻布中高の元国語科教諭で、日本大学文理学部長の紅野謙介氏が、そのわけを述べる。
「記述式試験は、受験生の多様な考えと表現を受け入れながら採点しなければなりません。自信がないとわざとぼかして書いたり、緊張からか力が入りすぎて線が潰れていたり。そんな受験生の気持ちに思いを馳せながら採点します。内容も多様で、“なんて突飛なことを思いつくんだ”と驚かされることも、“よくぞここまで読み解いた”と唸らされることもある。このために採点基準を変えることもあります。記述式の面白さは、こうした作問者と受験生の対話にあります」
ところが、導入されようとしている記述式問題は、
「大学と関係ない民間業者が採点するため、記述式の意義である受験生との対話は生まれません。また、50万人もの答案をさばくため、答えが極めて限定された設問にせざるをえません。公開されているサンプルテストや、昨年11月に実施されたプレテストを見ると、答え方に多くの条件がつけられ、たとえば文頭と文末の言葉が指定されている。受験生の発想を鋳型にはめてしまい、ナンセンスです」
そして、こう締める。
「これでは受験生は徐々に、条件づけされた質問にしか答えられなくなります。文科省は“主体的で対話的な深い学び”を目指しているはずなのに、逆に受験生の主体的な思考や他者と対話する能力が、どんどん殺されてしまいます」
言うまでもなく、教育とは人を創る場である。だが、大学入試という関門がある以上、入試のあり方が変われば、人の「創り方」も変わる。膨大な手間と予算を投じて、主体的な思考力を阻む入試を導入するとしたら、入試改革イコール未来に対する破壊活動になってしまうが――。
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