東大教授が斬る「大学入試英語の民間試験、延期ではなく理念の見直しを」
民間試験導入は日本の若者を「英語帝国主義」の最底辺に位置付ける――阿部公彦(1/2)
今月1日、すったもんだの迷走の果てに、2020年度から開始予定だった大学入試での英語民間試験導入の延期が決まった。だが、これで一件落着ではない。この難問山積の民間試験導入が「いずれ」実施される方針に変わりはないからだ。東京大学文学部教授の阿部公彦氏が問題の本質を斬る。
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「これからは英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)を測ります!」という看板を掲げて始まった英語入試改革だったが、これまで運営上のトラブルや準備不足が各方面から指摘されていた。英検やTOEFLなど七つの民間試験が導入される予定だったものの、試験の会場や日程が決まらず、受験生も学校も予定が立てられない。会場は地域間で大きく偏り不公平極まりない。試験会場への交通費等、所得格差も影響することなどが取り沙汰されてきた。こうした不備を裏付けるように、文科大臣が「(受験生は)自分の身の丈に合わせて勝負してもらえれば」と、格差を是認するかの如き発言をし、制度の綻びは隠しようがないものになっていた。延期は当然の帰結といえよう。
だが、今回の措置は24年度への導入「延期」であって「中止」ではない。また、主に問題視されているのは制度の「技術的」な問題であって、「本質的」な問題ではない。導入が先送りされ、その間に技術的な問題が改善されようとも、民間試験導入の孕む危険性は変わらないだろう。なぜなら、これまでも散々民間試験導入の不具合を指摘されながら、推進側は「障害はあるが、理念は正しいし」との理屈を決して捨てようとはしなかったからだ。事実、延期決定後も、与党内では「4技能評価」自体の方向性は堅持するとの声が上がっている。すなわち、「理念」は間違っていないと。しかし、本当にそうだろうか。実は、この理念にこそより根の深い病巣がある、と私は考える。そこで、以下、民間試験活用の「理念」がどのような歪みを持っているか、それが将来の日本にどのような問題を引き起こす可能性があるかを説明してみたい。
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