「男選びくらい間違えるなよ」彼女たちが虐待死事件の加害者男性ではなく被害者の母親をバッシングする理由

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自分が好きだから? 男の目を意識して?

 話を戻す。オシャレ用のヒールのあるパンプスは母との確執から、母に気に入られようと清楚な女性らしい格好に合わせるために履いていた。しかし、昨年になって自分のこのファッションをとある男性から侮辱されて人格否定までされ、精神的に追い詰められ、一気にファッションをカジュアル系に変えた。

 それに伴いパンプスもやめた。パンプスをやめたら足にいくつもできていたタコが嘘のように消滅した。そして、心療内科で医師との対話と薬の服用による治療を受けるうち、「私は私の人生を生きていく、自分のことは自分で決める」と思えるようになった。

 私の場合は母という存在がパンプスを履くことにつながっていたが、「自分が好きだから履く」という人の中には「男の目を意識して履く人」も少なからずいるのではなかろうか。この男性の存在というのが女性同士の分断の肝となっている。高いヒールのパンプスは脚長効果があり、すらっとした大人の女性らしい脚を演出できる。「男性へ媚びてナンボ」の価値観を持つ女性は可視化されていないだけで実際多く潜んでいる。それでなければファッション誌でモテコーデ特集なんて組まれないし、パパ活だって流行らない。
 
 2014年に放映されたので少し前のドラマだが、松本潤主演の『失恋ショコラティエ』では、石原さとみ演じるヒロインの紗絵子がデートに出かける寸前、高いヒールを履いた後一瞬考え、低いぺたんこ靴に履き替えて出かけるシーンがある。あのシーンで「うわぁ〜〜! この女計算高い!!!!!」と悶えた視聴者は多そうだ。萌え袖ファッションもそうだが、ときとして低いヒールも可愛い女を演じて男を虜にするアイテムに変身するのだ。

 女性の分断は男性の存在がそうさせる。男性がいない世界だと、ちょっとしたマウンティングは起こるかもしれないが、子殺しのシングルマザーバッシングや#KuToo運動などで起こるような分断は起こらないだろう。女性同士は敵同士ではないのだ。

 私も結婚披露宴会場のバイトでパンプスを強要されて痛い思いをしたので石川氏の#KuToo運動の署名には協力したが、一方で高いヒールへの憧れはある。そのヒールの先の鋭さから「攻撃力の高い靴」と私が勝手に呼んでいる高級ブランド、クリスチャンルブタンのヒールを履いてみたいのだ。艶のあるブラックで、尖った細いヒールに裏面は鮮やかな赤色。足の甲はえぐれているので、到底歩きやすい靴とは言えない。お値段は約10〜20万円。

 ルブタンを履いている女性を歌舞伎町でよく見かける。おそらく夜のお仕事の方だろう。そして、ルブタンを履ける女性は歌舞伎町からJR新宿駅までのあの数百メートルをタクシー移動できる人種だと思っている。だから私も将来的にはルブタンを履けるくらい経済的な潤いがほしい。もちろん、男に媚びずに自分の力で。

デイリー新潮編集部

2019年11月22日掲載

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