「男選びくらい間違えるなよ」彼女たちが虐待死事件の加害者男性ではなく被害者の母親をバッシングする理由
住む場所が違うと考え方も違う
先ほども述べたように、彼女たちの生活圏は家とパート先。全国区で話題になっている社会問題に関して疎い傾向にある。おそらく社会の動きや有名インフルエンサーの名前も知らないだろう。しかし、保育園無償化に関するニュースや待機児童問題、虐待死など、子どもに関する話題に関しては驚くほど敏感だ。
近頃数え切れないほど、新生児遺棄の事件が多い。ネットカフェで新生児を産み落として遺棄、コインロッカーから新生児の遺体が見つかった、援助交際をしていた少女が妊娠し新生児を遺棄、などなど……。
そのたびに福祉関係の専門家たちは「彼女たちがSOSを上げられる相手はいなかったのか」「臨月までお腹が大きくなれば誰か気づくはずなのに、誰も救いの手を差し伸べなかったのか」「なぜ少女は援助交際をする必要があったのか」といった、単純に新生児が殺されたという事実だけで済まさず、問題を根本まで掘り下げて解説している。
もちろん、生まれてくるはずだった命が母親により絶たれてしまうことは違法であり、あってはならない。しかし、なぜ彼女たちが自分の子どもを遺棄・死亡させざるを得なかったのかを考えなければこの問題は解決しない。
いつだったか、シングルマザーの幼児が交際相手の男性により虐待死された事件があった。地元で育児中の女性の同級生はこのネットニュースに飛びつき「男選びくらい間違えるなよ」というコメントをつけてシェアしていて面食らった。
我が子がもし交際相手の男性に殺されたらと思うと怒りと悲しみで胸が張り裂けそうになるのはわかる。しかし、なぜ子どもに手をかけた男性ではなく母親の方をバッシングするのだろうか。一番、母親が自責の念に駆られているはずなのに。母親は子どもを失う恐怖と共に、子どもへの暴行を止めに入ることで交際相手の男性を失う恐怖にも怯えていたのではないだろうか。
また、別の地元の同級生の女性は、数年前、若手俳優による強制わいせつ事件があった際、Webニュースの記事に「これ、ハニトラでしょ?」とコメントをつけてシェアしていた。女性が突然男性に襲われたら、レスリングの吉田沙保里元選手のような超人でもない限り男性の力には勝てない。広い視野と思考を持っていれば、簡単にハニトラ発言をしないはずだ。
それなのに、被害者女性をバッシングしていることにショックを受けた。見ている世界、住んでいる場所が違うとこんなにも考えが違うものなのかと。
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