安倍首相、桂太郎を抜いて在職単独1位に 懸案の後継者問題は第三の選択肢が急浮上
跡取りの目鼻は
安倍家にとって、重大な局面である。卒寿を超えた洋子さんの体調不安は図らずも、名門政治家一族が長年抱えてきた「懸案」の決着を急がせる要因になったようだ。声を潜めるのは、安倍家に近い政界関係者だ。
「洋子さんは婚家の安倍家と実家の岸家の政治的血脈をつなぎ続けることに使命と責任を感じ、昭恵さんとの間に子供がいない晋三氏の跡目にずっと気を揉んできた。自身の目の黒いうちに晋三氏の後継者を決め、地盤と態勢を固めておきたいと考えてきた。だが残された時間はそう長くはない。一族ぐるみでこの問題に早急に片を付けようということになった」
くだんの跡取りは、岸信介、その弟の佐藤栄作、そして安倍晋三という3人の総理を生んだ“華麗なる一族”の「4代目」である。候補はもともと晋三氏の「3人の甥」に絞られていたが、それぞれ本人の意思やお家事情などがあって混沌としていたとされる。
しかし、ここにきて目鼻がついたもようだ。
「洋子さんの意中の跡取りは、晋三氏の兄、つまり安倍家の長男である寛信氏の長男だった。嫡流へのこだわりだった。だが2013年慶応大卒で大手商社勤務の彼は政治家になる気は毛頭なく、立ち消えになった。このため、その後は晋三氏の弟である岸信夫元外務副大臣の長男か次男のどちらかの選択になったが揺れ動いた。2014年慶大卒、フジテレビ勤務の長男が有力とみられていたが、岸家の後継となることが優先される方向になったようです。結果的に2015年慶大卒で大手不動産会社に勤める次男を晋三氏が養子に迎え、跡を継がせる流れが固まりつつあるようです」(同)
となれば養子縁組のタイミングが今後の焦点になる。洋子さんもしっかりと見届けたいはずだ。
振り返れば、晋三氏の父・晋太郎氏は岳父・岸信介氏の首相秘書官に就任し、晋三氏も晋太郎氏の外相時代に秘書官を務めた。安倍家では後継者を秘書官に据え、将来に向けて「帝王学」を傍らで身に付けさせるのが流儀になっている。
安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までだ。現段階で「ポスト安倍」の行方は党則改正による「安倍4選」の目は消えていないが、官邸筋はこう読み解く。
「4選の話はともかく、安倍首相はこの任期中に跡継ぎを秘書官に起用する心積もりではないか。側近中の側近である経済産業省出身の今井尚哉政務秘書官を9月の内閣改造に併せて首相補佐官を兼務させるという異例の人事を行ったのも、そのための環境整備だろう。自身のために出世もよそに汗をかいてきた今井氏を、首相補佐官という次官級ポストで処遇するとともに、いつでも秘書官を解いて跡継ぎを後任に据える態勢をとったということだ」
独裁回避のために党則で定めていた総裁任期「連続2期6年」を、安倍・自民党は「連続3期9年」に延ばした。ゆえに在職期間が長くなるのは当然である。あとは2年足らずの任期中に顕著な“レガシー=政治的遺産”を残して「円満退任」できるかどうかだ。
しかし首相が在任中の最重要課題に掲げる憲法改正にしろ、拉致問題にしろ、北方領土問題にしろ、決着への視界は全く不良である。このまま、なんら道筋すらつけることなく総理の座を譲るのも、さぞ心残りだろう。
翻って安倍首相が仕えた小泉純一郎元首相は2006年9月の自民党総裁任期満了に伴って首相を退任した(在職日数は歴代6位の1980日)。
小泉氏によれば「同時に衆院議員も辞職して政界を引退することを考えたが、議員任期を3年も残していたため思いとどまった」という。小泉氏以来、自民党総裁任期満了に伴う首相退任はない。
自民党ベテラン秘書は「政治家が自身の後継者をオープンにすれば“一丁上がり”の印象が強まる」と指摘する。ここにきて強まる「長期政権の緩み」批判もよそに、なおも「先」を見据えているであろう安倍首相は、跡継ぎをお披露目するタイミングを慎重に計っているに違いない。
はたして、安倍首相の跡継ぎの“秘書官デビュー”はいつになるのだろうか。
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