沖縄で深刻化する深夜の「路上寝」問題 酩酊するまで飲んでしまう文化も一因か
突出していく沖縄
その後、全国で交通事故の件数は減少していく。沖縄も全く同じ傾向を示しているのだが、大げさに言えば路上寝だけは増えていったのだ。
地元紙の沖縄タイムスは14年5月6日、「酔って路上寝 増加/県内 5年で1200件増」の記事を掲載した。さらに同紙は17年10月29日にも「路上寝7159件 過去最多/16年県警通報件数/今年6月末現在で昨年上回る2828件 事件事故多発で注意喚起」と報じている。
こうした報道の積み重ねも、沖縄世論が「路上寝は社会問題」と認識する一因になったと考えられる。
ジャーナリストの惠隆之介氏(65)は沖縄県生まれ。防衛大学から海上自衛隊に進み、二等海尉で退官。琉球銀行勤務を経て、拓殖大学日本文化研究所客員教授、八重山日報の論説委員などを歴任。今も沖縄在住の論客として知られる。
その恵氏に路上寝の問題について取材を依頼すると、「恥ずかしながら、実は私も1度だけ、酔って路上で寝てしまったことがあります」と明かす。
「20年ほど前のことで、5月とか6月の暖かな夜でした。取引先の方に接待をされて紹興酒を痛飲したんですね。お開きになった店から自宅まで、タクシーで30分もかからないような距離なんですが、冷静な判断力を失っていました。『酔いを醒ますために、ちょっと休もう』と歩道で寝てしまいました。そして寝ると、地面がひんやりとして心地よく、ある種の解放感を覚えました」
作家の沢木耕太郎氏(71)の『深夜特急3-インド・ネパール-』(新潮文庫)には、インドのガヤ駅で午前3時ごろ、無数のインド人と共に野宿する場面がある。
《横になると、星のスクリーンが覆いかぶさってきそうなほど間近に見えた。やがて、土の微かな温もりがシーツを通して体に伝わってきた。大地の熱にやさしく包まれ、緊張が解けていくにしたがって、何千人ものインド人と同じ空の下で夜を過ごしているということに、不思議な安らぎを感じるようになってきた》
これと似た感覚があったのかもしれないが、恵氏の場合は手痛い目に遭うことになった。寝ている間に貴重品を盗まれ、「散々でした」と振り返る。沖縄では路上寝を狙う犯罪者が存在するのだ。
「私が海上自衛隊にいた時、青森県の大湊基地に勤務したことがあります。真冬の夜、街へ出た隊員の帰りが遅いと、周辺の捜索を命じたことも珍しくありませんでした。北国で路上寝は死に直結します。ところが沖縄の場合、冬でも最低気温は15度といったところでしょう。路上で寝ても風邪を引くくらいなので、『路上寝は危険だ』という意識を持ちにくいのだと思います」
もう1つ重要な問題なのが、「酩酊するまで飲んでしまう」という文化だ。国税庁がまとめた17年の全国都道府県におけるアルコール消費量のベスト10と、それに同年の推定人口で割った「都道府県民1人あたりのアルコール消費量」を表にしてみた。
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