「愛子さまを天皇に」という無責任な“報道”を懸念される天皇陛下と雅子皇后
「大嘗祭」を最後に即位に関する一連の儀式が終わると、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」(典範特例法)の成立時に附帯決議された「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」についての、政府の本格的な検討が始まる。巷では今、「女性の天皇でもいいじゃないか」という感情論が横行し、「上皇さまが愛子さまを天皇にと望んでおられる」とのニセ情報さえ流れている。振り返れば過去には、上皇后美智子さまや皇后雅子さまへのバッシングもあったが、意図的に流された中傷も少なくなかった。こうした軽薄で無責任な“報道”を最も悲しんでいらっしゃるのは、皇統の重みを一身に背負いながら象徴天皇としての務めを始められた天皇陛下であり、陛下を支えるために努力されている皇后の雅子さまである。
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「女系天皇は知らない」が「女系天皇に賛成」と世論調査に答えるのはなぜ?
マスコミ各社は「令和」になってから、現在の皇室典範では認められていない「女性天皇」あるいは「女系天皇」についての賛否を問う世論調査を頻繁に行っている。
いずれも、7割から8割が「賛成」と答えているケースが多いのだが、驚いたのはNHKが10月21日に発表した調査である。女性天皇の子どもが皇位を継承する「女系天皇」の賛否を問うたところ71%が「賛成」した。ところが、その「女系天皇の意味を知っているかどうか」を尋ねたのに対し、「良く知っている」と「ある程度知っている」を合わせた回答は42%しかなく、「あまり知らない」「全く知らない」が合わせて52%だったという事実だ。「知っている人」が42%しかいないのに、71%がこれに賛成しているのだ。一体これは何を意味しているのだろうか。「女系天皇」の意味や「女性天皇」との違いをわからないまま、ムードに流されて何となく「賛成」と答えているということではないのか。
産経新聞とFNN(フジニュースネットワーク)が一足早く今年5月13日に発表した合同世論調査でも、同じような傾向が見られた。女系天皇について64・2%が「賛成」と答えたのだが、「女性天皇と女系天皇の違い」について尋ねると、次のような結果が出た。「よく理解している」が12・4%、「ある程度理解している」が35・3%で、両者を合わせると47・7%だった。これに対し、「あまり理解していない」は32・2%、「全く理解していない」は15・7%で、合わせると47・9%もいたのだ。理解していないのに賛成するという矛盾である。理解していない人が約半数というのも驚きだが、筆者が注目したいのは「全く理解していない」と答えた15・7%の人についてである。おそらく、「女系」が全くわからないのだから、「男系」についてもわかっていないであろうと推測されるのである。
世論調査を否定するつもりも絶対視するつもりもないが、他の新聞やテレビ、通信社も、こうした難しい問題については単に賛否を問うだけではなく、一定の理解度を尋ねてみる必要があるのではないかと思う。
女系天皇に賛成しているのは共産党と社民党だけ
こうした問題に関連するのだが、今年7月3日、翌日の参院選公示を控えて、日本記者クラブが東京・内幸町に主要政党の党首を集めて討論会を開いた。そこで主催者側の記者が「女性天皇」の賛否を問うたところ、女性天皇と女系天皇が混同されるのを恐れた安倍晋三首相(自民党総裁)が質問方法に激しく不満をぶつけたのだ。以下、再現する。
記者:天皇制と女性の問題を皆さんに一斉にお訊きしますので、女性天皇は認めてもよいとお考えの方は挙手をしてください。
(立憲民主党の枝野幸男代表、日本維新の会の松井一郎代表、共産党の志位和夫委員長、社民党の吉川元幹事長が挙手)
玉木雄一郎・国民民主党代表:男系女性ですか?
記者:女性天皇は認める……。女系は後で訊きます。
玉木代表:どっちですか、男系の女性ですか、女系の女性ですか、ちゃんと――
安倍首相:ちょっと、ちゃんとこれ、大事な大事な大事な質問なんでですね。ちょっと挙手どうかっていうことではなくて、いわば私自身がこれ答えられる、今ここで答えるということではなくて。
記者:今それは質問しておりません……その……
安倍首相:党としてですね、これ決めていかなくてはいけない問題で、今議論中ですし、女性(天皇)というのもありますし、女系(天皇)という、今、玉木さんがおっしゃったような重要な点もありますから。
記者:じゃあ……
安倍首相:その違いもちょっと説明しながらですね、国民の皆さまに説明しないとですね、いろんな誤解を招きますから。大切な問題ですから、もう少ししっかりと意味を説明していただき、質問していただきたいと思います。
記者:女系天皇を認めてもよい――
(共産党の志位委員長と社民党の吉川幹事長が挙手)
記者:なかなか他の政党は結論が出ているわけではないというふうにうけたまわりました。わかりました。それでは続いて――
筆者はこの討論中継をテレビで観ていた。質問した記者は、世論調査の質問で使われる程度の“枕ことば”もないまま、いきなり女性天皇の賛否を訊いてきた。玉木代表の「男系の女性天皇か、女系の女性天皇か。どっち?」との逆質問は当然であり、安倍首相が少々声を荒げたのも無理はなかったように思う。女系天皇に賛成の挙手をしなかった枝野代表と松井代表にとっても、視聴者に誤解を与えずに済んだとすれば良かったのではないか。
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