金杉恭三(あいおいニッセイ同和損保社長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】
高齢者対策にも
金杉 もう一つ、この保険は、最近社会問題化している高齢者ドライバーの事故対策にもなるんです。ご高齢の方々はなかなか自分の運転能力の衰えや判断力の低下にお気づきにならない。それで事故を起こすことになるわけですが、客観的にどういう運転が危なかったか、この保険でお伝えすることができる。お子さんから「もう運転やめた方がいいんじゃないの」と言われると「うるさい!」となりますが、客観的なデータに基づけば、具体的に注意するポイントがわかるし、「衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」のついたサポカー(安全運転サポート車)に買い換えるという選択も生まれてくる。
佐藤 サポカーというチョイスがあるわけですね。
金杉 ご高齢の方って、車の買い換えに慎重なんですよ。これが最後の車というこだわりをお持ちです。でも客観的なデータに基づき、安全な車に乗り換えてもらう選択肢が生まれる。
佐藤 自動車会社ともどもウィンウィンになる。
金杉 高齢者問題では、もう一つ、役立つ機能があります。ご本人の承諾を得て、データを遠くに住むご家族の方に転送することもできるんです。そうすると田舎にいる親の運転挙動を、都会に住む子供が知ることができる。家族で見守り、危ない運転なら注意する。この機能からも、これからどんどん増えていく高齢ドライバーに、安全な運転を促せます。
佐藤 そう考えると非常に大きなマーケットがありますね。
金杉 そうなんです。
佐藤 今、自動運転に大きな注目が集まっていますけれど、これはなかなか進まないと思うんですよ。
金杉 自動運転にはレベル1から5までの段階がありますね。現時点で見えているのは3までで、人間不要の4、5まではまだまだ時間がかかる。乗用車を例にすると保有台数は6千万台ほどです。1年に売れる新車は約500万台ですから、全ての乗用車が切り替わるだけでも、単純に計算して十数年はかかってしまう。
佐藤 実際には十数年では利かないでしょうね。
金杉 ええ。限定された区間を自動運転することは明日からでもできると思いますが、どこへでも、となるとまだまだ先です。すると保険が必要になる。
佐藤 それが現実でしょうね。そもそも自動運転と相性のいい電気自動車の電池を作るのがなかなか難しいですから。
金杉 そうですね。
佐藤 ラジカルに社会が変わっていくのは予測しにくい。
金杉 しばらくの間は、道路上を、自動運転の車、サポカーなど安全装置のついている車、何もついていない車が並走する時代になります。そこで問題になることがあるんです。いわゆるサポカーと呼ばれる車はコンピュータが数多く組み込まれています。すると、コツンと軽くぶつけただけでも、ものすごい大きな損害額になるんですよ。
佐藤 それはそうですね。
金杉 事故はどんどん減っていくと思いますが、1事故あたりの修理単価はどんどん上がっていく。だから損害保険は間違いなく必要ですし、一方で事故対応の技術をどんどん高めていかなければならない。そこにもIT技術が関わってきますけれどもね。
佐藤 テレマティクス自動車保険は、契約者にも公平感がありますね。保険料に根拠がある。これまでは、ゴールド免許と同じで、自動車を運転しないと保険料が一番安かった。でもそれじゃ車を持っている意味がない。
金杉 やはり車を運転することを楽しんでもらいたいですね。統計では1年間で事故を起こす人は10人に1人です。これまで保険会社は事故を起こさないお客様には何もサービスを提供できていなかった。でもテレマティクス自動車保険はすべてのお客様にサービスを実感していただける保険です。
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