文在寅のせいで米国に見捨てられる 核武装しかないと言い始めた韓国の保守派

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「米軍追い出し」を狙う文在寅

――露骨ですね。

鈴置: 単なる脅しで終わりそうにないところがミソです。トランプ大統領なら在韓米軍の撤収に動いても不思議はない。2018年6月の第1回米朝首脳会談の後に「すぐにではないが、在韓米軍の兵士を故郷に戻す」と語っています(『米韓同盟消滅』第1章第1節)。

――米軍が撤収したからと言って、米韓同盟が消滅するとは限らないのでは?

鈴置: 在韓米軍の撤収は事実上、米韓同盟の消滅につながります。この同盟には自動介入条項がない。米国の軍人が韓国に存在することが、韓国が攻撃を受けた時に米軍が助けに来る担保となっているのです。

 在韓米軍の削減・撤収は文在寅(ムン・ジェイン)大統領も後押ししています。現在、韓国軍の戦時作戦統制権は米軍の大将が司令官を務める米韓連合司令部が握っています。

 文在寅政権は「国軍の独立」を名分に、統制権の早期返還を求めました。米国も韓国の要求を基本的には受け入れ「韓国軍が十分な能力を保有することが確認された段階で移管する」ことになりました。

 統制権の返還に伴い、連合司令部の司令官も韓国側が出すことになりますが、そうなると在韓米軍は大きく削減される可能性が大きい。米国は「一定以上の規模の部隊の指揮は他国の軍人に任せない」との原則を持つからです。

 文在寅政権は任期が終わる2022年5月までに統制権を返還するよう強く求めています。でも、韓国軍には北朝鮮軍の動向を偵察する能力もないなど、「独り立ち」は当分無理との見方が一般的です。

 保守派にすれば、文在寅大統領は北朝鮮が核を持ったというのに米軍を追い出す、とんでもない指導者です。朝鮮日報の社説の見出しに「核がなくとも安保ポピュリズムの文」とあるのはそれを指します。

クルド人も見捨てた米国だから…

――「米国が韓国を見捨てる」ことに話を戻すと……。

鈴置: 韓国人にもっともショックを与えたのが、米軍がシリアから撤収するとの今年10月の発表でした。トランプ大統領は同盟関係にあったシリアのクルド人勢力を見捨てたからです。韓国人は「次は我々だ」と考えたのです。

 朝鮮日報は10月11日、「トランプの『血盟のクルド人』への背信、他人の話と言っていられるのか」(韓国語版)という見出しの社説を載せています。

 裏切りを非難されたトランプ大統領は「第2次世界大戦でクルド人は米国を助けなかったからだ」と説明しました。滅茶苦茶な言い訳ですが、その理屈から言えば、韓国は真っ先に米国から見捨てられるべきです。

 韓国は「米国を助けない」どころか「米国を裏切り、中国の言いなり」になっています。朝鮮日報の「中国側に立つな、米国務次官が露骨に圧迫」(11月8日、韓国語版)で、以下のように報じました。

・クラック(Keith Krach)国務次官は11月7日(韓米外交当局がソウルで共催した韓米・官民経済フォーラムで)「中国は米国の価値に敵対的であり、米国に否定的な影響を持っている。米韓関係はインド太平洋地域の安全保障追求に重要な柱の役割だ」と述べた。
・中国を露骨に批判しつつ、対中牽制策である「インド太平洋戦略」に韓国が積極的に参加するよう要求したのだ。

 韓国はインド太平洋戦略への参加を拒み、逃げ回っています。この記事の見出し通り、韓国は米国から中国側に鞍替えし始めているのです。

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