金融機関がすすめる「退職金プラン」に死角? 「投資はプロまかせ」が危険な理由
退職金は大事な老後資金。賢く運用して、老後を豊かに過ごしたい。しかし、その退職金が狙われている!? 投資の知識が乏しい場合、金融機関のプロのアドバイスに従って運用したいという人は多いだろう。投資は苦手という相談者に対し、創立17年のお金の学校「ファイナンシャルアカデミー」(https://www.f-academy.jp/)の講師・山本麗子先生が警鐘を鳴らす。
「投資が苦手」でiDeCoにも手を出さないという相談者
読者代表:吉田正史さん(仮名・53歳)
新卒で入った中小企業で営業として勤続31年。高校生の長女と中学生の長男を育てる2児の父。年収は650万円で、マイホームは35歳の時に35年ローンで購入し絶賛返済中だ。目下の不安は退職後のお金のやりくりだが、お金に関する知識はやや不足気味。「投資はギャンブル」と思っている。
山本先生:ところで吉田さんは、iDeCoでの老後資金づくりはしてますか?
吉田さん:いや…やってないです。iDeCoって投資しなきゃいけないんでしょう? 私は「投資はギャンブル」だと思ってるんで……。
山本先生:あら、もったいないですね、吉田さんの条件(会社員・年収650万円・企業年金なし)だと、掛金の限度額は1カ月2万3千円ですから、限度額いっぱいまで積み立てると、1年間で8万円分の税金控除が受けられるんですよ。
吉田さん:それは惹かれます。でも、投資の知識もないし、とにかく元本割れの危険があるだけでも嫌なんです。
山本先生:それならiDeCoで定期預金もできますよ。元本保証型の保険などの金融商品も選べます。
吉田さん:えっ、そうなんですか? 元本割れもしないなら、いいですね。
山本先生:iDeCoで拠出できるのは60歳までですが、今から毎月2万3千円を拠出していけば、7年間で57万9千600円も節税できます。
吉田さん:でも、2万3千円を毎月はきついな~。小遣いなくなっちゃう。全然飲みにもいけなくなりそうです。
山本先生:毎月の掛金は、無理のない金額でやるのが大切です。節税効果は小さくなってしまいますが、5千円から積み立てられますし、途中から増額も可能ですよ。iDeCoの魅力は運用中の利益に対しても非課税というところですから、投資にもチャレンジして資産を大きく育ててほしいですけどね。
吉田さん:iDeCoにデメリットはないんですか?
山本先生:デメリットは、積み立てたお金が10年間引き出せないことですね。加入期間が10年に満たない場合、期間によって引き出せる年齢が変わります。53歳の吉田さんの場合だと今すぐ始めても、引き出せるのは62歳からです。
吉田さん:でも、60歳で拠出は終わるんでしょう?
山本先生:そうです。
吉田さん:その後の2年間ははどうなるんですか?
山本先生:新たな拠出はできないのですが、その後の2年間は「運用指図者」となり、運用のみ行います。ちなみに、この期間も毎月の口座管理手数料が引き落とされます。
吉田さん:ええ~、ぼったくりじゃないですか。
山本先生:口座管理手数料が無料の金融機関もあるので、できるだけ手数料の安い金融機関や金融商品を選ぶことが大切ですね。ちなみにiDeCoは受取る時も税金のメリットがあり、「退職金」として一括で受取ることもできるんですよ。
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