徴用工判決から1年、近々、文在寅は日本に擦り寄って来るという3つの根拠
韓国大法院(最高裁)が韓国人元徴用工への賠償を命じる判決を下して、10月30日で1年が経過した。この判決以後、韓国は元慰安婦を支援する「和解・癒やし財団」を解散、さらに日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めるなどしたため、日韓関係は戦後最悪の状態に突入している。結局、徴用工問題は解決するのか、日韓関係は改善するのか。産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏に今後の見通しを聞いた。
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「11月4日、バンコクのASEANの会場で安倍晋三首相と文在寅大統領が10分ほど、話をしました。映像を見ると、そばには英語の通訳がいただけです。つまり、まったく予定していなかった接触だったのでしょう。文大統領のほうから安倍首相に声を掛けたわけですが、これは韓国が、徴用工問題を何とか解決したいという気持ちの現れですね」
日本政府は、徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとし、韓国政府で対応すべきという姿勢を崩していない。
「韓国大法院の判決から1年経って、日本政府は一貫して強行姿勢を崩していません。
その甲斐あって韓国の世論やメディアは、日本側の主張を理解するようになりました。具体的に言うと、1つは、元徴用工(原告)が差し押さえた韓国にある日本企業の資産を現金化するのは認めない。現金化した場合、韓国は日韓請求権協定を破棄したことになり、日本側は報復措置を取るということです。そうなれば、当然、日韓関係はさらに悪化します。もう1つは、この問題の解決にあたっては、韓国政府が関与すべきということですね」
文喜相国会議長は先日、日韓両国の企業と国民から寄付金を集めて賠償金にあてる案を提示したが、
「文議長の案は、韓国政府が関与していないので、日本政府は応じないでしょう。この案は、日本にとって解決策というより、逆に事態を悪化させるものでしかありません。日韓請求権協定では、韓国は日本から受けた5億ドル(うち3億ドルは無償)の資金で、国営企業を作りました。すでに民営化されていますが、ポスコという製鉄所です。この企業によって、韓国経済は急激な発展を遂げることができました。ですから、まずは韓国政府と日本の資金で作られた韓国企業が元徴用工へ賠償を行う。これなら韓国は協定を守ったことになりますから、日本政府も納得します。その上で、日本が元徴用工への賠償としてではなく、例えば、日韓未来発展基金とか日韓歴史和解基金といった基金を作り、徴用工に関わった日本の企業がそこへ資金を出す。元徴用工で、訴訟に加わっていない人は沢山いますから、基金が必要になります。こういう形でしか、徴用工問題の解決はあり得ないでしょう」
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