“私って友達少ないかも…?”32歳独身女性が孤独に打ち勝とうともがいて得た「気づき」

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「正しい甘え方」は生きやすさにつながる

 今、心療内科で医師に話を聞いてもらったり、心理学の本を読んだりして勉強中だが、「正しい甘え方」は生きやすさにつながる。

 例えば、体調が良くないのに定時間際に上司から大量の仕事を明日までに仕上げてほしいと言われ、残業になってしまいそうなとき、甘え下手な人は無理して自分一人でこなす。でも、甘え上手な人は「こういう理由で残業になりそうです。体調も良くないので早く終わらせたいです。申し訳ないけど、もし手が空いていたら手伝ってもらえませんか?」と同僚などに交渉し、無事手伝ってもらえたらきちんとお礼を言ったり、その後その同僚が困っているときにフォローをしたりして助け合う。

 私も以前、かなりタイトなスケジュールの仕事の依頼が舞い込み、その仕事自体は楽しかったが、作業量が多い上、相場よりギャランティーが安かった。一度は飲み込もうと思ったが、お世話になっている編集者に相談すると、「ここはきちんと相場のギャラをもらいましょう」とアドバイスされた。そこで、自分の今の状況を説明し、ギャランティーの交渉を行い、無事上げてもらい、仕事もしっかりこなして納期内に終わらせた。

 これらの行為を心理学用語で「アサーション」と呼ぶ。私は知らないうちにアサーションを行っていたのだと主治医に知らされた。アサーションは「自分も相手も大切にする自己表現法」で、アメリカで生まれた。自分の状況と主張を説明しつつ、相手に納得してもらい、お互い配慮し合えるコミュニケーション方法だ。しかし、日本語にはこれに該当する言葉がない。

 友達の数の疑問から心理学にまで話が飛躍してしまったが、今後はワガママと良い意味での甘えを履き違えないよう、気をつけて歳を重ねていきたい。そして、もし友達との時間が取れにくくなったとしても、アラフォーの先輩方を見習ってたくましく生きていきたい。

 余談だが、今年の5月に亡くなった女優の京マチ子氏は、生涯独身を貫いた。事実上引退した後は、同じく独身で仲の良い女優仲間と同じマンションでのんびり暮らしていたという。もし、結婚できなくてもこのように仲の良い友達と近所で暮らすという余生の過ごし方がある。

 作家の雨宮処凛氏の著書『非正規・単身・アラフォー女性 「失われた世代」の絶望と希望』(光文社新書)には、「ババアシェアハウス構想」が登場する。雨宮氏がインタビューしたアラフォー独身女性のうちの一人の老後の妄想だ。簡単に説明すると、彼女は独身の老人女性が集まって楽しく暮らすシェアハウス、その名も「ババア御殿」の実現化を語っていた。もしかすると、京マチ子氏の晩年もこのババア御殿に近かったのかもしれない。

 大人になると友達を作りづらくなる、疎遠になってしまうと思われがちだが、それは自分次第だ。何かあったら助けてくれるのは甘えられる友達。せっかくのSNS時代なのでそれを駆使し、こまめに連絡を取り合い、ときには意見がぶつかったとしても解決に努め、一生友達付き合いを続けていきたい。

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【参考文献】
『アサーション入門 自分も相手も大切にする自己表現法』平木典子著(講談社現代新書)

 バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年11月8日掲載

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