八千草薫 40年来のマネージャーが明かす「最期の言葉」
「じつは10月29日は谷口千吉先生の十三回忌で、法要に向けて準備を進めていたところでした。“お前、こっちに来いよ”って呼ばれたのかもしれません」
そう語るのは10月24日に88歳で他界した女優・八千草薫のマネージャーをつとめた原田純一氏だ。八千草は夫で映画監督でもあった谷口の回忌法要に合わせるように世を去ったというのである。
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八千草は今年2月、がん闘病中であることを公表した。いわく、昨年1月に膵臓がんの全摘手術を受けるも年が明けて転移が判明。今後は治療に専念する、と。
しかしそれでも、4月に始まったドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」には、脚本家の倉本聰氏のたっての願いで、ごく短時間ながら出演を果たした。そのとき八千草は倉本氏の熱意に打たれ、
「がんばるしかないわね」
と、嬉しそうに漏らしたという。原田氏が語る。
「最近はずっと自宅と病院を行ったり来たり。彼女が“家に帰りたいわ”なんて言うのを、病院は認めてくださっていた。24日は病院にいて、朝6時に看護師さんが“お加減はいかがですか”と尋ねてくださると、“変わらないわね”と答えたそうです。が、30分ほどして様子が急変し、私にも連絡が入りました。直接言葉を交わすことは叶いませんでしたが、他に身寄りのない彼女を、なんとか見送ってあげることができました。いつもと変わらぬ穏やかな顔でした」
原田氏は八千草と40年来の付き合いになるそうだ。
「背伸びもせず、虚勢も張らない、いつも自然体の女優でした。谷口先生は“女優なのに自己顕示欲が弱い”と言っておられましたが、それが彼女らしい、誰にも真似のできない演技と存在感につながったと思っています。仕事への意欲はまったく衰えず、映画やテレビドラマなどに引き続きお声がけをいただいていて、“出たいわ”なんて前向きなことも言っていました」
最期まで“変わらなかった”女優としての意欲。