女性ヘルパーに睡眠薬でわいせつ行為…事故で「寝たきり障害者」になった犯人のやるせない事情

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妻も仲間も失って

 府警の事情聴取に木原は、

「“触りたかったから”と供述しています。ただし彼の障害の度合いも考慮すると、実際に触ったかどうかは不明です」(同)

 事故で体の自由が利かなくなったとは多分に気の毒な事情ではある。とはいえ、それと犯罪とは別の話。

 とまれ、かつての木原は妻も子もいる仕事熱心なイクメンだったという。

 近隣住民によれば、

「人の2倍も3倍も働くええ職人やったよ。3人の子供をいたく可愛がってな。地元のだんじり祭りでは山車の上に乗る花形。でも事故で人が変わってしもたんや。8千万円の保険金が下りたまではよかったのかもしれへんけど」

 入院中に妻とは別居。

「木原が兄のように慕っていた鳶の親方は、木原の妻子を食事に連れていくなど、面倒を一生懸命見てはったんやけど、木原は2人の仲を疑い出してな。最後は探偵まで雇って、親方相手に裁判も起こしよった」

 ついには見舞いに訪れる人もいなくなったそうだ。

「自分の両親も幼い頃に離婚しとって、母親は一回も見舞いに来んかった。木原はベッドの上で妻子と一緒に収まった家族写真を、ただ寂しそうに見つめてましたわ」(木原の知人)

 それでも2年半の入院とリハビリを経て、介助つきとはいえ車椅子で外出できるまでに回復した木原。最近は地域の自立支援センターで同じ障害を持つ人と知り合い、活力も得たが、今回、その仲間をも失った。

 府警は木原が勾留に耐えられないと判断し、準強制わいせつ致傷容疑で書類送検。今後、罪名を傷害罪に切り替えて起訴する方針だ。

 障害者の性の問題に詳しいノンフィクション・ライターの河合香織氏は語る。

「障害者も健常者と同様に性的欲求はある。しかし、その解消方法が限定されているため苦しんでいる人は少なくありません。こうした被害を防ぐには、同性による介護を進めるなどの対策も必要だと思います」

 やるせない事件であった。

週刊新潮 2019年10月31日号掲載

ワイド特集「転がる楕円球の行方」より

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