黒木華に続き京都造形大卒の俳優が次々活躍、相変わらずの日芸に明大文学部も注目
負けられない日芸、女子アナ輩出の明大
京都造形大への注目も頷けるわけだが、日芸も依然として魅力的な役者を輩出している。まず河合塾のランキングを確認してみると、「芸術−演劇A1期」(演劇学科・演技コース)の偏差値は52・5だ。
この「A1期」は入試方法を指し、1次試験は国語と英語の2科目が課せられ、2次試験は演技コースの場合、「(1)実技〔〈1〉演技〈2〉音感・リズム感〕(2)面接」という内容だ。ただし、京都造形大学と同じようにAO入試や一般推薦など、入試によらない選抜も用意されている。
歴史が長いだけあり、OBの俳優でベテランまでチェックすると、実に錚々たる顔ぶれだ。演劇学科の卒業生だけでも、12代目・市川團十郎(1946~2013)、伊藤蘭(64)、三谷幸喜(58)、田中哲司(53)、中退も含めると、藤竜也(78)、高橋英樹(75)、中村獅童(47)――とキリがない。そこで京都造形芸術大学と年齢層を揃えるため「35歳以下」という条件を加えてみた。
すると、さすがに日芸でも「演劇学科」だけでは3人と数が少ない。ただし日芸には映画学科演技コースも存在し、さらに他学科出身者でも芸能界入りするケースも少なくないので、こちらは「藝術学部の卒業生」とし、学科は不問とした。
蒼井優(34)と黒島結菜(22)は中退したが、表の6人は知名度が高いことに気づく。関係者が指摘したように、確かに演技力は京都造形大のほうが上回るのかもしれない。だが、日芸の卒業生はスター性のある役者が多いと言えないだろうか。
河合塾のランキングに戻ると、芸術系学部で最も高い偏差値を示しているのは青山学院の「文−比較芸術個別学部」、「文−比較芸術全学部」と、明治大学の「文−文−演劇学全学」の2大学だ。
いずれも偏差値は62・5。明治大学の場合、入試科目は「国語」と「英語」の2科目に、「地歴」で1科目選択して合計3科目。いわゆる“私立文系”の典型例であり、極めてオーソドックスな内容だ。
この明治大学文学部の「演劇学専攻」だが、プロの俳優だけでなく、近年は民放キー局のアナウンサーを輩出して注目を集めている。こちらもOG・OBのベテラン組は、田中裕子(64)やら松重豊(56)やら大物がずらりと並ぶため、日芸と同じように35歳以下という条件で表にまとめた。
原田夏希(35)は少し説明が必要かもしれない。04年から05年にかけて放送された連続テレビ小説「わかば」(NHK総合)でヒロインを務めた。「そういえば」と、思い出す方も少なくないだろう。
その後もドラマ、映画、舞台と幅広く活躍してきたが、16年に医師と結婚。17年に出産し、現在も第2子を妊娠中ということもあり、演技の仕事は控えているようだ。
明治大学の演劇学専攻は、芸術系学部として最も偏差値が高いことと関係あるのか、2人の女子アナを輩出している。入試の難易度から“才色兼備”のイメージを持たれているのかもしれない。
特に斎藤ちはる(22)の場合は、中学生の時に乃木坂46に応募して選出。芸能活動を続けながら明治大学に進み、テレ朝の内定を得てから引退という経歴を持っている。タレントが大学で演劇学を学んで局アナになったわけで、いかにも“今どき”な印象が強い。
こうして駆け足で3大学の比較を行ってきたわけだが、アメリカではハリウッドのスターでも、大学で演劇を学んだ俳優が少なくない。アメリカの「ハリウッド・レポーター」誌が選ぶ「世界の演技学校ベスト25」は恒例企画だというが、なぜか日本では14年の結果しか報じられていないようだ。
少し古い話になるが、ご紹介しよう。当時の1位は名門イエール大学の演劇大学院。卒業生はポール・ニューマン(1925~2008)、メリル・ストリープ(70)、シガニー・ウィーバー(70)という具合だ。
日本では、いまだに大学で演劇を教える学校は決して多くない。だからこそ京都造形大、日芸、そして明大の3校が果たしてきた役割は大きいと言える。そして前出の関係者は「もう1つ、大阪芸大も忘れないでください」と言い添える。
「時任三郎さん(61)、古田新太さん(53)、筧利夫さん(57)、渡辺いっけいさん(56)、木下ほうかさん(55)という方々が在籍しました。今は東日本の大学を卒業した演劇人の卵より、京都造形大と大阪芸大を卒業した生徒のほうが勢いを感じます。どちらも『役者になりたい』という想いが強く、俳優としての底力があるんです。今後、両大学出身者が芸能界を席巻する日が来るかどうか、要注目でしょう」(同)
[3/3ページ]