台風19号「風評」でキャンセル続出…今こそあえての「被災地観光」のすすめ
「安いプラン」
同じ長野には、千曲川が氾濫して、望まぬ形でその名を広く知られてしまった千曲市内に戸倉上山田温泉がある。幸い温泉街の浸水は最小限で、約30軒ある旅館は普段と変わらず暖簾を掲げるものの、客足は鈍い。
旅館「亀清」の主人で、妻の実家に婿入りしたという米国人のタイラー・リンチ氏は、
「半分以上キャンセルが出ましたが、わざわざお越し頂いたお客さんに感謝の気持ちを伝えようと、特別に松茸ご飯を出したり、ハロウィンの装飾を用意しました。普段より数千円安いプランも提供しています」
こんな時だからこその「おもてなし」を受けることができるというわけだ。
「災害が起きた後に来てくれるお客さんは、宿にとって特別な存在なんです」
そう話すのは、世界32カ国千カ所もの湯に浸かってきた、温泉エッセイストの山崎まゆみ氏だ。
「私も東日本大震災や熊本地震の直後に被災地の温泉を訪ねましたが、苦しんでいる宿の方は“あの時のお客様”といつまでも憶えていてくれ、再訪すれば心の交流が一層深まります。被災地への観光はそういった触れあいを味わえる上、経済的にも応援できるのでお勧めしたいですね。実際、スマトラ沖地震の後、復興半ばのプーケット島に行ったら欧州からの観光客がたくさんいて驚いたことがあります。彼らは口々に“大変な時こそ応援しなきゃ”と言っており、日本と比べ余暇に対する考え方がこうも違うのかと思いました」
紅葉狩りや年末年始の旅行を検討中ならば、あえての「被災地観光」に出かけてみては如何だろうか。
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