年俸5億円で登板ゼロ…ファンを失望させた「外国人選手」リスト【投手編】

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 プロ野球の世界で、外国人選手はチームの戦力を大きく左右する存在となっている。その中で高額な年俸で大きな期待を受けながら、それに見合うような結果を残せず「戦犯扱いされる選手」は少なくない。今季、期待外れだった外国人選手は誰か。今回は「投手編」だ。

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 今季は日本で実績を残した来日2年目以降の選手の不振が目立った。その筆頭格がソフトバンクのサファテだろう。2017年にNPB新記録となるシーズン54セーブをマークするなど、通算234セーブの絶対的守護神だが、股関節手術でわずか6試合登板に終わった昨季から復活できず、今季は来日9年目で初の1軍登板なしに終わった。療養中には、日本の投手起用や母国である米国女子サッカー選手を批判したツイッターが話題になるなど“本業以外”で目立っていたものの、推定年俸5億円の投手が2年間まったく戦力になっていない。これは、球団にとって泣くに泣けない事態だったと言わざるを得ないだろう。

 ほかにも、ソフトバンクでは先発のバンデンハークもわずか3試合の登板(2勝0敗)に終わった。昨季まで2年連続2ケタ勝利をマークし、来日4年で39勝を挙げているオランダ人右腕。今季は腰痛や右ひじ痛などで大きく出遅れた。クライマックスシリーズと日本シリーズで好投して、なんとか面目は保ったが、こちらも4億円という年俸を考えると、球団泣かせの選手と言うしかない。サファテは来季が3年契約の2年目。バンデンハークは今季が3年契約の最終年だったが、ポストシーズンの活躍もあって残留する見込みだ。2投手とも来季以降の復活が期待される。

 先発投手では、ロッテのボルシンガーも期待を裏切った。来日1年目の昨季は外国人投手の最多タイ記録となる11連勝を記録するなど、チームのトップの13勝を挙げた。今季の年俸は1億8700万円と倍増し、ローテの中心に期待されたが、脇腹の違和感や足首の捻挫など、度重なる故障で9月までに5度の登録抹消となり、20試合の登板で4勝6敗に終わった。

 ボルシンガー同様、日本ハムのマルティネスとオリックスのアルバースも、いわゆる“2年目のジンクス”にハマってしまった。来日1年目でマルティネスは10勝、アルバースは9勝で、ともに2年目は2億円を超える年俸で先発ローテを支える存在になるはずだった。オフに一度自由契約となり、年俸2億5千万円で再契約したマルティネスは右前腕屈筋損傷、左脇腹痛と相次ぐ故障で1軍登板ゼロ。貴重な先発左腕として2年契約を結んだアルバースは、6月に腰痛の検査で一時帰国するなど、13試合登板でわずか2勝と期待を裏切った。

 また、セ・リーグでは、ヤクルトのブキャナンが先発の柱の期待に応えられなかった。来日2年目の昨季は、開幕投手を務めてチーム唯一の2ケタ勝利をマークし、今季も苦しい先発陣の中で故障に苦しみながらもローテを守った。しかし、5月末から自身5連敗で登板7試合勝ち星なし。8月に3勝をマークして月間MVPに輝いたが、18試合登板で4勝6敗と残念な結果に終わった。

 来日1年目の新外国人投手でも、期待を裏切った選手は少なくない。今季パ・リーグ5位に終わった日本ハムでは、先発もできるリリーフとしてハンコック、クローザー候補にバーベイトを獲得したが、ハンコックは0勝1敗2S、防御率9.00、バーベイトは2 勝2敗1ホールドと、ファンの期待を裏切った。

 バーベイトはMLB3年間で44試合登板を記録した現役メジャーリーガーとして来日。日本での飛躍が期待された今季は、マイナー時代に経験していた先発でも起用されて2勝をマークしたが、不安材料だった制球面の悪さが改善されず、リリーフ登板で失点を重ねて1軍定着がままならない状態だった。

 18年にメジャー初昇格を果たして10試合に登板し、日本ハムではクローザーとして期待されたハンコックは、開幕カードで1ホールド1セーブを記録したが、5月に右肩鍵板炎を発症して治療のために帰国。7月に再来日したが、その後も1軍登板なしでシーズンを終えた。

 ロッテのレイビンは、MLBでの4年間で35試合に登板、150キロを超える速球を武器に高い奪三振率で守護神候補として期待された。しかし、右脇腹を痛めて開幕1軍を逃し、6月にようやく初登板を果たしたものの、2戦目となった交流戦の阪神戦で3安打3四死球5失点と大炎上して1回もたずに降板。二盗、三盗を許すなどクイック投法にも欠点があり、日本の野球に対応できなかった。

 セ・リーグでは、MLB通算236試合登板の実績を引っさげて巨人に入団したクックが、13試合登板で0勝2敗6セーブとなんとも微妙な成績に終わった。開幕から4試合連続セーブと快調な滑り出しだったが、4月17日の広島戦で2点リードを守れず初黒星を喫すると、右ひじの違和感を訴えて同23日に登録抹消。交流戦で復帰後もわずか2試合の登板で再び2軍落ちするなど、シーズン4度の抹消と1軍に定着できなかった。こちらもレイビンと同様にクイックが課題で、9月には先発として起用されたが、4回途中1失点で降板と結果を残せず、その後は1軍でマウンドに立つことはなかった。

 先発の一角に期待された広島のローレンスは、6人目の先発として開幕1軍が確実視されたが、開幕直前に祖父の葬儀に参加するため、一時帰国を余儀なくされた。すぐに再来日したが、すでに1軍に居場所はなかった。チームの先発陣が崩壊状態となった7月にようやく初先発を果たしたが、5回6失点と結果を残せず、1軍登板はこの1試合のみに終わってしまう。ローレンスの場合は実力不足というより、ジョンソンやレグナルト、フランスアの3投手が活躍していたチームで外国人枠に泣いたケースだろう。

 昭和の時代の外国人2人制から1軍登録枠が4人に広がり、さらに所属外国人選手が育成枠も含めて制限がなくなった現在は、多数の外国人投手を獲得する球団が増えている。このような状況では、期待に応えるどころか、1軍登板のチャンスさえ与えられない選手も少なくない。外国人投手にとっては、日本野球への適応以前の問題で、厳しい時代になっているといえそうだ。

※推定年俸は宝島社『プロ野球選手データ名鑑2019』などを参照

野球ライター・山村智雄

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月31日掲載

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