神戸「小学校イジメ教諭」の実名 文科省の怠慢で次はあなたの子どもの教壇に立つ可能性

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防ぐ手立てがない

 文科省の担当官は、3年以上前の情報を掲載しない理由について、

「日本の法体系のなかで、前科や前歴が時間の経過とともに抹消され、社会復帰しやすくなることと同じ考えによるもので、弁護士資格なども同様です」

 と続けたが、いかがなものか。弁護士と教員をくらべたとき、決定的に異なる点が二つある。一つは、弁護士は依頼しなければいいし、依頼後に前科が判明したら、契約を解消すればいい。だが、教員は選べない。保護者の意思で替えることもできない。二つめは、教員は人を創る仕事だということだ。これから人格が形成される子どもたちを、人格が破綻した人間に預けていいはずがなかろう。

 だが現実には、教師は恐ろしく守られている。先に、4人の加害教師たちが有給休暇中だと書いた。苛烈な虐待に対する沙汰待ちの間、給料が払われ続けることに、違和感を覚えない人がいるだろうか。そこで神戸市教育委員会に尋ねたが、

「たしかに、有給はおかしいという厳しいご意見も市民の方からいただいていますが、事実確認中でどういう処分に該当するかもわからない段階で、無給で休ませるという制度はございません。また、地方公務員法で懲戒処分は軽いものから戒告、減給、停職、免職の四つがありますが、処分がどんなものになっても、有給分は支払われます」

 今回の虐待は、有給の適用外という特例を設けるに値するはずだが、給料を受け取っているのなら、せめて会見に同席するとか、保護者説明会で謝罪するとか、処し方があるだろう。だが奥見弁護士によれば、

「関口先生から相談を受けた9月の時点で、加害教師が“あいつ舐めてるな。逆にこっちが訴えたろか”といっているとわかっていたので、直ちに警告書を出そうとしました。しかし、学校は自宅住所をはじめ、加害者の情報をなにも教えてくれません。埒が明かないので仁王美貴校長に4人分の警告書を郵送し、手渡してほしいと頼んだのです」

 実際、加害教員たちは自宅も離れ、どこかに身を潜めている。だが、守られるべきは加害教員ではなく被害者であり、子どもたちである。仁王校長は「加害教員を二度と東須磨の教壇に立たせない」との旨発言したが、裏返せば他校では立ちうるという話である。述べてきたように、それを防ぐ手立ては、長い禁錮刑以上にする以外、事実上ない。

 たとえ懲戒免職になっても、3年たてば再び教壇に立つ道が開け、自治体は彼らの過去を知らずに採用してしまう。だが、過ちを隠したままでは加害教師たちの更生にもつながらない。そして更生も不十分な虐待教師に、わが子、あるいはわが孫が、いつか気づかぬうちに導かれる可能性が、これほどあふれているというのが現実である。それを前にしては、社会不安すら生じかねない。

 加害教員に厳罰を科すことも大事だが、自己防衛も必要だ。しかし、加害教員の実名さえ伏せられていては、身を守る手立てもない。あえて彼らの実名を明らかにする所以である。

週刊新潮 2019年10月31日号掲載

特集「今度はあなたの子どもの教壇に立つ 神戸『小学校イジメ教諭』の実名」より

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