台風19号 最大幸福か最少不幸か(古市憲寿)

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 東日本を縦断した台風19号は列島に大きな被害を残した。堤防の決壊や洪水や土砂災害が相次ぎ、死者や負傷者も多数に上った。

 被害状況が伝えられるたびに思い出していたのは、宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」という歌だ。「誰か」が願いを叶えるために、別の「誰か」が泣いているかも知れない。この曲には「みんなの願いは同時には叶わない」のかも知れないという問題提起が含まれている。

 今回の台風では試験湛水中だった八ッ場ダムが、その貯水機能によって利根川流域を水害から守ったという説がSNS上を賑わした。...

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