千葉台風連続被災で「憧れのプチ田舎暮らし」の夢が壊滅…移住者の明暗を分ける「物件選びの新基準」
共助機能が動いているか
本来、田舎暮らしを求める者は、グーグルマップの上空写真で「緑のエリア」から選定するケースが多いと聞いた。だが、緑とはすなわち倒木リスクで、電気インフラの弱さというのは想定外だったように思う。
さらに21号被災による道路冠水と孤立は、川沿いだけでなく「勾配条件・排水条件の良い台地の上」でも多発したことを考えると、もはや上空写真や標高図を参考にするのも無駄に思えてきた。
物件の設備や敷地の条件においては、やはり敷地内や隣接する森に、倒れた際に家屋に直撃するものがないかは重要な課題だろう。ちなみに電線や道路を寸断した樹木のほとんどは杉の木で、その他の雑木林の木々は大木が根元から折れるケースはほとんどないようだったので、樹木の種類にも確認が必要だ。
敷地がある程度広い場合は敷地内に電力会社の電柱を立てて引き込み線をひくケースが多いが、やはり復旧が遅れるリスクを孕んでいる。さらに21号被災では市道から自宅までの「私道」が冠水した場合に、やはり排水のための公助が最後の最後に回されるケースが多かったことも付け加えたい。
こうして書いていると、あたかも緑に包まれたエリアが最も危険と言っているようだが、実はそうばかりでもない。というのも、被災後に地域をめぐって最も「可哀そう」に感じたのが、同じプチ田舎暮らしの中でも、「小規模造成地」に住む人々だったように思うからだ。
千葉県内はバブル期に、林間部の思いもよらぬスペースを切り拓いて5世帯とか10世帯といった小さな造成地が作られていた。住人が歯抜けになっていることも多いが、周囲にそれなりに緑は充実しているし、中古住宅としての値ごなれ感はかなりのもので、敷地150平米にファシリティもそこそこ新しい5LDKが1千万以内といった、思わず食指が動く売り物が多い。
だがこうした小規模造成地は、農村部と比較して地域のつながりも薄く、各世帯にチェーンソーといったような田舎で暮らすための備えがあるわけでもなく、前述したように地域に続く道一本が寸断されれば即座に孤立して「公助待ち」となってしまったようなのだ。
信号が少ない田舎では、徒歩1時間が車で10分。倒木や冠水で自動車が通れなくなるだけで、10分でたどり着けた「目と鼻の先」のスーパーやコンビニが、往復2時間の歩きになる。それでも、近隣住民と不安を語り合うのみで公助を待つしかないのは、もはや地域の脆弱だろう。真夏や真冬では命のリスクでもある。
同様に農村以外の千葉移住の候補地では、「東京まで通勤特急で1時間」を売りに、特急停車駅付近に大規模造成された住宅地もあるが、こちらは世帯数が多いために「大渋滞と燃料・食糧確保困難」という問題に直面した一方で自治会単位の共助はそれなりに機能し、小規模造成地のような孤立はなかったようである。
「共助機能が動いているか」。これもまた、これまでの田舎暮らしのエリア選定でほぼ重視されてこなかった点だろうと思う。この被災を通じて、「意外尽くし」だったというのが、率直な感想だ。
改めて、この台風15号19号21号で被災状態の続いている地域が、いち早い復旧をとげるよう祈ると同時に、今後地方移住を希望とする方々の参考になればと思う。田舎暮らしはやはり良い。けれど、一見して似たようなエリアでも、気象災害時のリスクは大幅に変わってくることを、今後念頭に置いていきたい。
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