五輪マラソン札幌案の裏にカジノ誘致 小池知事が知らない菅官房長官の思惑
“カジノ利権の中心”
おそらく小池知事は次のことも把握していないはずだ。今回の件に、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の候補地選定が関係している、という見方が出ていることを――。
「今回の件の最大のポイントは、東京五輪マラソンの札幌開催をテコにした、“北海道へのカジノ誘致の加速”なのです」
と、政府関係者が明かす。
「そこには菅義偉官房長官だけではなく、彼と結びつきの深い鈴木直道・北海道知事、地元出身の橋本五輪相、それぞれの思惑が横たわっています。橋本五輪相は元々、北海道へのカジノ誘致に熱心でした」
カジノの開設は都道府県・政令指定都市が申請し、国土交通相が国内に最大で3カ所を認める予定だ。
「誘致レースの本命は大阪。菅さんの地元の横浜も、“ドン”の藤木幸夫・港運協会会長が反対しているという事情はあるにせよ、相変わらず有力です。残る3枠目の候補地としては長崎や和歌山があげられますが、北海道の鈴木知事は苫小牧市を優先候補地としつつ、誘致判断を留保しています」
そう語るこの政府関係者によると、「マラソン札幌案」は以前から官邸内部で模索されてきたという。そんなところに先に触れた陸上版「ドーハの悲劇」が起こり、IOCの焦りもあって札幌移転がにわかに現実味を帯びることになったわけだが、
「菅さんとしては北海道をカジノの有力候補地に一気に押し上げたい。そこで、IOCが組織委に札幌案を伝えてきたタイミングで、カジノ誘致に踏ん切りをつけられていない鈴木知事に“決断”を迫ったという情報もある。つまり、“マラソンをやらせてやるから、北海道にカジノを誘致せよ”というわけです」(同)
IOCは「アスリートファースト」を理由に日本に決断を迫っているが、その裏では、ドロドロの“政治”が繰り広げられていたのである。
「地元の横浜だけではなく、苫小牧でもカジノの開設が認められれば、3枠のうち2枠が“菅案件”となる。それは、菅さんが引き続き“カジノ利権の中心”として主導的な地位を保ち、それを誇示することに繋がります」(同)
今月30日から行われるIOC調整委員会での議論を経た上で「札幌移転」は正式決定する。折しもその直前の28日には、苫小牧市議会において、カジノ関連の補正予算が可決された。
IOCのバッハ会長、組織委の森会長、そして菅官房長官。それぞれの思惑が作りだした大きなうねりに、小池知事はどこまで抗うことが出来るだろうか。
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