台風19号「立ち小便で〈増水の手助け〉」「濁流の多摩川で水泳」バカッター続出の愚

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「注目されたい」

「台風で突飛な行動をすることは、ネットが世に広まった当初からあることです」

 と振り返るのは、SNS事情に詳しいITジャーナリストの井上トシユキ氏。

「90年代後半、誰もが気軽に画像をアップロードできるようになると、大雨に吹かれながら駅の階段の手すりを滑り台のように滑る様子や、プロ野球選手を真似て河原の水たまりにヘッドスライディングする姿を投稿することが流行りました。承認欲求を満たしたい若者はとにかく注目されたい。“いいね”をたくさん貰いたいという心理です」

 そんな井上氏も、今回のような命の危険を伴う「バカッター」は、初めて目にしたとしてこう続ける。

「私自身、かつて日本水泳連盟の指導員の資格を持っっていたので、濁流の恐怖をよく知っています。川の中には渦巻く波があって足をとられたら最後。川底に引きずり込まれていく。これらの投稿を真似て、同様の危険を冒す子供たちが出かねません。ネット投稿は前例を踏まえて過激化する傾向がありますから、もっと考えて行動して欲しい」

 死と隣り合わせの状況だからこそ、愚行を犯さずにはいられない。そんな人間存在の不可解さが、台風によって炙り出された。

週刊新潮 2019年10月24日号掲載

特集「『狂乱台風』生と死の人間学」より

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