巨人完敗の日本シリーズ、FA選手の調査よりいい外国人を【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人対ソフトバンクの日本シリーズはあっけなく終わった。

 ソフトバンクの4連勝で、3年連続の日本一だ。工藤公康監督を始め、ナインにはおめでとうと言いたい。王(貞治)さんもうれしそうだった。もちろん、少し複雑な思いもあるだろうが、巨人に勝っての日本一だ。願いはかなった。

 3・5対6・5、もしくは3対7で巨人が不利。しかも2連敗するようなら一気にやられる可能性もある。

 私のこんな予想が当たってしまった。ソフトバンクはCSファースト・ステージの第2戦からファイナル・ステージで西武を倒し、6連勝でシリーズに臨んだ。終わってみれば10連勝だ。ソフトバンクは勢いに乗っていた。実力的にも戦力層の厚みが違っていた。

 シリーズは短期決戦だ。4連敗はあり得るパターンだった。

 福岡の第1戦。先発の山口俊がソフトバンクの勢いを止めることができなかった。

 ラッキーボーイが出るなら、投手陣からと踏んでいた。例えば山口が2勝するとか、もつれる展開の時だ。

 ところが主導権を渡してしまった。後手に回った上に相手は勢いがある。一気に飲み込まれた印象だ。

 シーズン中は打線が投手陣をカバーしたけど、坂本勇人、丸佳浩の不振が大きかった。ともに1安打だ。

 丸はストライクを見逃していた。手が出なかったのか。それとも迷いがあったのか。ストライクゾーンに来たら振る。もっと開き直ってほしかった。

 この2人はV9時代なら「ON」のような存在だ。打てなければチームは落ち込む。

 阿部慎之助もよく頑張ったが、やはり5番以下の打線を比べると見劣りがする。下位に松田宣浩、内川聖一が座る。控える選手たちを見ても巨人とは差があった。

 内野のミスも相手に突かれた。ミスはした方が負けだ。それにソフトバンクは中継ぎ投手陣が充実していた。突き崩すのは難しかった。

 ソフトバンクは3年連続を含む直近5年で4度も日本シリーズに出場している。巨人は13年以来となる。経験の差もあった。原辰徳監督が言う「まだまだ途上」のチームなのだ。

 完敗だった。

 でも、巨人は5年ぶりのリーグ制覇を果たした。今回の日本シリーズの結果をいい糧にして来季に臨み、悔しさを喜びに変えてほしい。

 早くもFA権を獲得している選手の調査報道が出ている。FAは人的な補償が伴う。それよりもいい外国人選手を獲得してもらいたい。最低2人、チーム強化の補強費ならあるはずだ。

 今年のプロ野球は連勝したと思えば連敗、またはその逆がよく見られた。最後にソフトバンクが象徴するように10連勝。勢い、それを後押しする分厚い戦力が際立った日本シリーズだった。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月25日掲載

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