【超・実践的DV脱出マニュアル】今これを読んでいるDV被害者の皆さん、あなたは間違っていない、逃げていい!

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連れ戻されるのではなく、自分で戻ってしまう

――シェルターにいられるのは2週間ほどですよね。その後は?

遠藤:家を出てシェルターで数週間過ごした後は、アパートを借りて住んでもらいます。実家は夫がすぐ来るので避けて、知人など支えてくれる人がいる場所に、なければ加害者とできるだけ距離を取るよう、少なくとも他県で部屋を探すように言います。今はネットで不動産が探せるし、事情を話してお金さえ払えば、すぐに部屋を借りることができます。お金を持っていればですが。

 でも縁もゆかりもない場所での生活って、すごく孤立するんです。だって学校でも職場でも、女性ってみんな子どもとか夫の話ばっかりでしょ。でも――私もそう言いますが――DV被害者は危ないから、夫が追跡を諦めるまでは、夫の話なんて絶対にしてはいけない。だから人付き合いができなくて寂しいし、不安になってくる。そういう中で、夫と連絡を取ってしまうんです。よく加害者が来て連れ戻されて……とか言いますし、まれにはそういう場合もありますが、そうじゃないんです。「暴力を振るわれて、なぜ逃げないのか」と聞く人がいますが、たとえ殴られても一人ぼっちよりはいい、「ここは私の家で、この人が夫」と言える方が安心なんです。

――自分で戻ってしまうとは……。

遠藤:行政が「これで解決」と終わらせても、「その後」のそういう状況があるから、私は民間の自立支援NPOを始めたんです。孤立した女性たちは、誰でもいいから安心して話せる相手が欲しい。友達を見つけてね、できなくても役所の婦人相談員に相談できるからね、話すだけで違うよ、何でも聞いてもらっていいし、何もなくても行っていいんだよ――と伝えます。元夫以外に頼れる場所があるということをちゃんと伝える。転居先でも自治体の相談員か、あるいは民間団体につなぐ。それでも相談に行かない人は行かないんですけど、それはもうしょうがない。

 夫と離婚が成立すれば落ち着いてくるし、同じ地域にいれば馴染んではいきます。その段階で、この人は大丈夫そうと思う人に出会えば、DV被害を受けたことを言ってもいい。最終的には口に出さないと立ち直れませんから。離婚理由の半分以上はDVなので、シングルマザーがいれば同じ境遇かもしれない。新しいコミュニティの中で新しい関係を作り、自分一人じゃないと思えればすごく安心もできます。

 自立とは、一人で何でもやれることではなくて、一人でできないことを助けてもらえる関係を作ること。DV夫が「友達作るな、付き合うな」と言うのは、自立させないためなんです。真面目な人は従ってしまうからね。電話もメールもチェックされて。

――肌感覚でいいんですが、相談に来る人、相談に来て逃げる人、逃げたのに戻る人の割合はどのくらいでしょうか?

遠藤:シェルターに入った後で夫のところに戻る人は、10人に1人くらいでしょうか。シェルターにはルールもあるし、携帯電話も預けなければいけないし、外出もできないから、たった2週間くらいなんだけど、我慢できない人もいるんですよね。

 相談に来る人は、その時点で半分くらいは「逃げよう」と思って連絡してくるから、シェルターに行くかどうかは別として、様々な形で一歩踏み出してはいますよ。一番の問題は、相談してこない人なんです。

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