【超・実践的DV脱出マニュアル】今これを読んでいるDV被害者の皆さん、あなたは間違っていない、逃げていい!
DV夫はなぜ暴力をふるうのか? 被害を受けた妻はどうすれば現状打破できるのか? 前編に引き続き、DVや貧困などの困難を抱えた女性の自立支援をするNPO法人「くにたち夢ファーム Jikka」代表の遠藤良子さんに話を聞いた。今回はより具体的なDVからの脱却方法を指南する。
※前編はこちら→https://www.dailyshincho.jp/article/2019/10241100/
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夫宛てに書き置きをすべし
――家を出るタイミングは、どう図るのでしょうか。
遠藤:そこは一番難しい問題です。でも究極的に言えば、衝動に任せる。「今しかない」と思う瞬間にしか実行はできません。被害者は相談の時点では「もう耐えられない、1週間後の子どもの運動会の翌日に出る」とか言うんですよ。こちらとしては運動会なんてやってる場合じゃないとは思うけど、子どもにも転校を強いるのだから最後くらい……と思うんでしょう。でもじゃあその日に本当に家を出るかというと、たいていが出ないんです。「やっぱり……」と言いだして。DV被害者の場合、計画はあてにならない。計画を立てたものの、結局は実行しないパターンがほとんどです。だから「この日に」と決めることより、「いつでも出られる」という状況を作ることの方が大事。夫が酒飲んで暴れた、その瞬間に出る。準備と道筋ができていたら、それでいいんです。
――決行の日にすべきことはありますか?
遠藤:夫宛てに書き置きをする。何も書かずに家を出ると、周りを巻き込んでしまいます。あて名は「****様」とフルネームで。内容は5~6行、「今日私は家を出ます、いろいろ考えましたが少し休みたいので、しばらくそっとしておいてください。こちらから連絡するまで待っていて下さい」程度で。敬語で事務的に、「こういう理由でここを離れる」という事実のみを伝える。離婚というような現時点で決められないことには、変に触れないでいいです。
家を出る前には、手持ちの電話帳や住所録などはすべて処分する。携帯電話、パソコンなどの電子データも削除する。これは家を出た後、夫に捜されないため。妻を捜す夫の騒ぎを拡大させないためです。
そして家を出ることは、絶対に誰にも言わない。特に、夫が真っ先に訪ねていく親兄弟や親友など、近しい人にこそ秘密にして下さい。知っていれば、必ず言ってしまいます。夫とも面識のある人は、どちらが悪いか判断できない状況で、夫に涙ながらに「反省している」と懇願され、隠し通すことに罪悪感を感じてしまいます。相手のためにも、言ってはいけません。
すべての道をふさがれた夫は、警察と役所に行きます。でも前もって伝えておけば、警察は捜索に応じませんし、役所も何も答えません。このあたりで夫は「計画的に逃げたこと」に気づき、シェルターに行ったことを理解します。そうなるともう手が出せない。
ストーカー化する人は、ここから探偵を頼んだりする。役所に変な電話がかかってきたりとかいろいろな動きが始まります。その場合は、第2の手を打たなければいけませんが、たいていの人はこのあたりで諦めます。たまに役所で暴れる人もいますが、役所もさすまたで取り押さえるような訓練もしていますから。
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