いま一番ヤバいDV男の特徴は「外面だけは好印象」――強烈なモラハラと「暴力的行動」で、女性に恐怖を植え付け支配する
「脱出したい」以上に「脱出できない」
――DV被害者がそうした状況から逃れるために、一番必要なことはなんでしょうか。
遠藤:私もDV被害者だったんです。法律も何もない時代で、自力で脱出しました。被害者をDVから救うために一番必要なのは、結局のところ、本人が「ここから離れたい、離れてもいいんだ」と思うことなんです。「どうなるかわからないけど、今よりはマシなはず」と思えるかどうか。その時にちょっと誰かが助けてくれれば、逃げることは可能です。
ここを始めていろんな相談者が来ますが、逃げる人と逃げない人の違いは、それまでの人生で誰かに助けてもらったことがあるかどうかでしょうね。虐待を受けて養護施設にお世話になったとか、要するに誰かに助けてもらわないと生きていけないと思ってる人は、助けを求める。でも、それがなかなかできない。
――それはどうしてなんでしょうか?
遠藤:とりあえず食べるものがある、家がある、少し我慢しさえすれば――という生かさず殺さずの中で生きているからでしょうね。そういう中で精神がやられていって、どんどん動けなくなる。意欲が衰えて無気力になっていく。でも辛い気持ちはあるから、電話やメールで相談してくるんですよ。でもこちらが何を話しても、思考は「できるはずない」「我慢すればいい」「無理に決まってる」の堂々巡り。自分で自分を縛ってしまい、できるのはそこに留まることだけ。夫は私を殴るけど、殺すわけじゃない。お金も1日千円しかくれないけど、千円はくれる。その人が身動きが取れなければ、支配はそれで十分貫徹するんです。
――そういう相談者に、「逃げよう」と思う瞬間が来るのでしょうか?
遠藤:私なんかは話していると、最終的にはケンカになることも(笑)。優しくしてても出てきません。最初はとにかく相手の話を聞きますよね。そうだよね、大変だよね、どうしたらいいかね、一緒に考えるよ、って。そういうやりとりをしながら、具体的に「お金はありますか? じゃあここまで来る交通費はありますね。出てくるときはこうしなきゃダメですよ」と話していく。
でも来ると言っても、結局は「行こうと思ったけどやっぱり具合が悪くていけません」と連絡が来る。これを何回か繰り返します。「あなたの人生だから、あなたの自由。でも今の状況を変えたいなら、あなたが“助けて”と私が届くところまで手を伸ばしてくれなければ、何もしてあげられない。無理に連れ出してもあなたは戻ってしまうし、そんなことをしたら余計に危険になるから」と。
DVの夫婦関係が、普通の離婚と同じように解消できると思ったら大間違いです。避難なんて穏便なものじゃない、大げさでなく決死の脱出なんです。中途半端な覚悟でなく、腹をくくって覚悟してもらわないと。被害者も怖いけど、こちらも相当な危険を冒すんですから。
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