いま一番ヤバいDV男の特徴は「外面だけは好印象」――強烈なモラハラと「暴力的行動」で、女性に恐怖を植え付け支配する
妻を支配し、うっぷん晴らしの道具として使う
――遠藤さんが感じる最近のDVの形、傾向などはどんなものがありますか?
遠藤:最近は発達障害とか、アスペルガー症候群のDV夫が増えてきましたね。コミュニケーションが苦手で話がかみ合わないから、いらだって暴力が始まったり、一晩中怒鳴りまくったり、でもそういう人たちは、一通りやるとおとなしくなったりする。陰湿じゃない。
最近一番多いのは、モラルハラスメントの相談ですね。妻を自分の憂さ晴らしのはけ口にして、奴隷のようにコントロールするというもの。そういう人たちは身体的な暴力はマズイからと、陰湿に妻をイジメるんです。例えば、妻に正座させて3時間、5時間、延々説教するとか、多いんですよね。ちゃんと聞く姿勢として、正座じゃないと許さないんです。例えば、夫が会社に行く時忘れ物をすると、それを「お前のせいだ!」と怒鳴る。いつも用意してあげているんですか?と聞くと、妻は「そうではないけれど、嫌だったんだと思います」と。
――それが当たり前として、受け入れるようになってしまっていると。
遠藤:そうやって仕方ないと受け入れ反抗しなくなり、たどり着く極地が「野田小4女児の虐待事件」のような事件です。あれは夫から妻への身体的な暴力もありましたが、強烈なモラハラも受けていて、「もう言うことを聞くしかない」となったパターンでしょう。妻は最初は子どもを庇っているんだけど、庇えばもっと子どもが虐待されるし終わらないから、我慢して傍観するようになっていく。そのうち「お前もやれ」と言われて、手伝うようになる。DV被害者が児童虐待の加害者に転じていく、そこまで支配されつくします。
――それが毎日続いて、常態化してしまう。
遠藤:そうです。それが普通になってしまう。すごく激しい暴力を受けている人ほど、暴力を過小評価します。少しくらいなら怖いと思わない、「夫の癖ですから」と暴力とすら思わない。夫が刃物を出してきて殺されそうになったことが一度でもあれば違いますが、暴力を振るわれてはいるけど、生き延びてはいるから。だから狡猾な加害者は、刃物は決して使いません。壁際にぐーっと妻を追い詰めて、顔の脇の壁をガンガン殴る。あとは寸止めね。それだけで死ぬほど怖いから、殴らなくても十分「従うしかない」と思わせられる。
暴力、経済的な圧迫、セックスの強要……目的は相手をねじ伏せ支配することだから、手段はなんでもいい。支配してしまえば「完全に俺のもの」だから、好きなようにできる。奴隷のように労働させ、風俗店のように性的な奉仕をさせ、気に入らないことがあれば鬱憤晴らしの道具にする。DV夫は、そういう存在が欲しいんです。
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