【産後クライシスルポ】離婚率「子どもが0歳~2歳の夫婦」が最も高いワケ

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「経済的にやっていけるんだったら、離婚してもいいと思うよ」

「どうやら彼は『本来は結婚をしたら、家事も子育ても女がやるべきなのに、俺はどっちもやってあげてる、それなのに』っていう被害者意識があったように思います。男尊女卑というか、男だからこう、女はこうっていう思い込みがあって。だからか、出産費用を1円も出してないのに『俺が産ませてあげた』とも言っていました。

 家計の分担は、彼が家賃、私は水道・光熱費・ネットや子どもにかかるお金、あと日用品を買っていたんです。産後半年で仕事に復帰したし、産休育休中だって、ちゃんと家計費は出していた。なのに『俺が養ってる』って言っていました。

 嘘つきなのかなとも思ったんですけど、どうやら本気みたいなんです。だから話してると、だんだん私も頭がおかしくなりそうになるし、しかもあまりに堂々と嘘を言うから、周りの人が私のほうが嘘を言ってるんじゃないかって思っちゃうんですよ。

 そういう彼の言動を見て、この人は、自分のことで頭がいっぱいで、人のことを考える余裕がないんだなってわかってきて。とにかく自分を認めて欲しいみたいで、『俺がんばってる』『俺かわいそう』。話し合いがしたくても、『俺はこんなに家事もやってるし、こんなに子どもの面倒も見てるのに、何が気に入らないの?』って言われたら、普通に話もできないじゃないですか」

 しかし、モラハラ男性とは共依存になりやすく、なかなか別れることが出来ないとも言われている。おまけに美智さんの場合は、恋人時代の優しくて献身的な彼の姿を知っている上に、子どもが生まれたばかりということもある。なかなか別れる決意がつけにくかったと思うが、どうやって離婚を決意したのだろうか。

「きっかけは母親に、わたしがすっかり萎縮してしまっているのを指摘されたことです。けど、いざ別れるとなると、やっぱり迷いもあって。自分はこの子とやっていく自信はあるけど、それでもいいのかなって。

 けど、相談しても、誰も止めなかったんですよね。『経済的にやっていけるんだったら、離婚してもいいと思うよ』って、みんなお金のことしか言わなくて。結婚って、そんなに経済に重きがあるんだって思って、そうしたら、『結局、結婚ってなんなんだろう』って感じになってきて。この子が生まれてなかったら、本当になんであの人と結婚したんだろうって思う(笑)」

 そうして、美智さんの結婚生活はちょうど2年ほどで終わりを遂げた。

「私、産む前は産後クライシスを心配してたんですよ。彼の知り合いの夫婦でも、子どもが生まれた途端に妻の態度が別人みたいになって、別れたって話を聞いたので。けど、彼のほうが変わったじゃんって(笑)。

 再婚は……したいかは微妙です。彼氏は欲しいですね。でも時間がないというか余裕がないし。離婚する前はすごく寂しくて、離婚したら彼氏が欲しいなって思ってたんですけど、離婚したら寂しくなくなりました」

“子の誕生”で、妻の身体が変化するように、“結婚”というライフイベントによってモラハラ夫になる男性が存在する――そこに脳やホルモンの変化が関係しているのかは不明だけれども――ことは確かだ。そしてまた、多くの女性が口を揃えていうのは「結婚前は、そうじゃなかった」という台詞でもある。

 結婚前には、見抜くのが難しいものだからこそ、世の中には夫のモラハラに苦しむ妻が多く存在している。美智さんは産後すぐに仕事に復帰し、収入を得る手段を持ち続けていたので、離婚を選択することが出来たのが幸いだったと思う。

大泉りか(おおいずみ・りか)
1977年東京生まれ。2004年『FUCK ME TENDER』(講談社刊)を上梓してデビュー。官能小説家、ラノベ作家、漫画原作者として活躍する一方で、スポーツ新聞やウェブサイトなどで、女性向けに性愛と生き方、子育て、男性向けに女心をレクチャーするコラムも多く手掛ける。『もっとモテたいあなたに 女はこんな男に惚れる』(イースト・プレス 文庫ぎんが堂)他著書多数。2017年に第1子を出産。以後育児エッセイも手掛け、2019年には育児に悩む親をテーマとしたトークイベント『親であること、毒になること』を主催。

2019年10月22日掲載

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