【産後クライシスルポ】離婚率「子どもが0歳~2歳の夫婦」が最も高いワケ

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 現代社会を生きる女性が避けては通れない「婚活」「結婚」「妊活」「子育て」。これらのライフイベントに伴う様々な困難にぶつかりつつも、彼女たちは最終的には自分なりに編み出した「ライフハック」で壁を乗り越えていきます。読めば勇気が湧いてくるノンフィクション連載「女のライフハック」、待望の第8回です。

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乳幼児の育児中という一番大変な時期にあえて離婚

 産後の母親に声をかける常套句のひとつに「すっかりお母さんの顔になったね」というものがある。わたしが息子を出産した時も、お祝いに駆けつけてくれた友人の幾人かが、そう言っていたけれど、違和感しかなかった。

 子どもを生めば“母”と呼ばれる立場になる。けれども、息子を生んでしばらくは、自分の中に “母”という自覚は、まったく芽生えていなかった。もちろん子どもへの愛情はあったけれど、むしろ「わたしがやらなければ」という責任感と、そのプレッシャーが先に立っていたから、母性の素晴らしさとやらを讃えられる度に「人に責任を強いるのに、都合のいい言葉を使うな」と白々しくも思っていた。

 が、時は流れて、我が子ももう2歳と9カ月。結果的に1000日以上、母親業を遂行してきた。母性の芽生えは、未だに自覚できていないが、 “母”と目されることに異論はないし、「すっかりお母さんの顔になったね」と言われても、なんの抵抗もなく頷けるようになった。

 さて、わたしと同時に“親”という立場になった人間がもうひとりいる。配偶者だ。2年と9カ月前、わたしと配偶者には、“夫婦”に加えて、“両親”という属性が追加されたのだが、そうなった瞬間、わたしたちの関係はみるみるうちに悪化することとなった。

 産後、育児のメインは、産休中のわたしが担当することになったものの、昼夜問わずの授乳や頻繁なおむつ替えなど、慣れないことばかりに気を張り続ける日々は、とにかくしんどかった。

 もうひとりの親――夫――に頼ろうと、「もう少し、積極的に手伝って欲しい」と訴えたところ、返ってきたのは「もう少し子どもが成長して、遊べるようになったら、出来ることも増えると思うのだけど、今は小さすぎて怖い」という弱音だった。人には得意不得意もあるし、出来ないという人に、根性論を振りかざして強制させるのは、わたしの好みではない。

 ならば、夫には仕事を頑張ってもらい、わたしは育児に励む“役割分担”でいこうと一度は納得したものの、子どもが生まれる前とまったく変わることなく、ジム通いを続け、好きな時に飲みにいく夫の姿を見て、「わたしだけ負担が大きすぎる」と再度訴えることになった。

 しかし、「そうはいっても、出来ないものは出来ない」と夫はあくまでも主張を崩さず、結局、状況は改善することなく、寝不足と疲労も手伝って常にイライラしていて、何かあればすぐに言い合いが勃発する日々だった。

 どうすればこの事態を解決に導けるのか。ヒントを探している時に出会ったのが『ママたちが非常事態!? 最新科学で読み解くニッポンの子育て』(NHKスペシャル取材班著、ポプラ社)という一冊の本だった。特に産後、夫婦関係が悪くなる “産後クライシス”が起こる理由を、科学的に読み解いた第3章「夫へのイライラが止まらない」はとても興味深かった。

 例えば、育児に深く関係しているオキシトシンというホルモンは、子どもやパートナーに対する愛情を深める一方で、育児を邪魔する相手に対しては攻撃性を生むこと。

 赤ちゃんの泣き声を聞いた時の男女の脳の働きが違う(父親の脳は、単なるノイズと赤ちゃんの泣き声を聞いた時の変化に違いはない。母親の脳は赤ちゃんの泣き声により強く反応する)ゆえに、母親が強いストレスを抱える要因となっている……といった、産後に夫婦仲が拗れる科学的根拠が紹介されていた。

 科学的に証明されているのならば、配偶者に対して目くじらを立てるのも仕方ないと思えるし、実際に、子持ちの友人は「ガルガル期(産後に感情の起伏が激しくなり、周りの人に攻撃的になってしまう時期)は、ホルモンバランスの問題だと知って、わたしはおかしくないんだって安心した」と言っていたので、科学的な実証が母親たちの拠り所になることは間違いない。

 さらにこの本の中に、子どものいる夫婦の離婚率について、興味深い記述を見つけた。末の子が0歳から2歳の時、つまり産後間もない頃の離婚が最も多いというのだ。

 その根拠として示されている厚生労働省の平成23年度全国母子世帯等調査の「母子世帯になった時の末子の年齢階級別状況」によると、総数1648世帯のうち、0歳~2歳が563世帯で34.2%を占めている。次点は3歳~5歳で336世帯の20.4%で、末の子どもの年齢が上がるにつれて、件数は減少している。

 しかし、乳幼児の育児中という、とにかく手のかかる時期、助けの手の欲しい時期に、配偶者と別れるのは、よっぽどのことがあってだと思うけれども、それは果たして、母親のホルモンバランスや男女の脳の働きの行き違いだけなのだろうか。

 そんな疑問を解くべく、今回は、子どもが1歳の時に離婚したという原田美智さん(仮名・36歳 家族構成:長女3歳)にお話を聞くことにした。

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