森保ジャパンはタジキスタン戦で完勝も、「FC東京組の継続起用」に大きな疑問

スポーツ

  • ブックマーク

Jリーグの優勝争いは佳境

 カタールW杯アジア2次予選の第3戦、タジキスタン対日本戦が10月15日にタジキスタンのドゥシャンベで行われ、日本は南野拓実(24)の2ゴールなどで3-0の勝利を飾った。

 ***

 開幕から無傷の3連勝は日本(グループF)の他にグループAのシリアとグループBのオーストラリアの3カ国だが、無失点を続けているのは日本だけとなった。

 10月10日のモンゴル戦から日本は、負傷したDF冨安健洋(20)に代わって植田直通(24)を、ボランチには遠藤航(26)に代え橋本拳人(26)を、そして右MFは伊東純也(26)に代えて堂安律(21)を戻し、1トップには永井謙佑(30)に代えて鎌田大地(23)を起用してきた。

 立ち上がりのタジキスタンの印象は「なかなかやるな」というのが正直な感想で、「侮ることのできない」相手というものだった。前線からのプレスで日本のビルドアップにプレッシャーをかける一方、守備陣は組織的で、カバーリングもしっかりオーガナイズされている。加えて、2万人を越える地元の大声援を受け、攻守に勢いがあり、中央アジアの国らしくフィジカルも屈強だった。

 彼らの勢いに押されたのか、前半10分までの日本はリスクを避けてロングボールを多用した。ただし、1トップに起用された鎌田はどちらかというと1・5列目の選手だ。あらかじめロングボールを多用するのであれば快足FWの永井か伊東を起用すべきだろう。

 これはモンゴル戦でもそうだったが、永井や鎌田も下がってポスト役を務めようとしたものの、なぜか彼らに“くさび”のパスが入ることはほとんどなかった。元々、大迫勇也(30)のポストプレーは高校時代から定評があったが、モンゴル戦とタジキスタン戦で大迫がいた時のような攻撃スタイルを採用することはできないことが判明したと言っていいだろう。

 そして日本が誇る両サイドのドリブラー中島翔哉(25)と堂安も、個人技でDFを剥がそうと勝負する回数は明らかに減っていた。やはりリスク管理を優先したのかもしれない。このため後半、森保一監督(51)がどう動くのかが試合の焦点の1つとなったし、前半を0-0で終えられたのは24分にカウンターから抜け出たイーソン・パンシャンバ(20)のシュートをGK権田修一(30)がビッグセーブで防いだからだった。

 ところが後半に入ると、日本が立て続けにチャンスを迎えた。鎌田が1・5列目に下がり、0トップのような形でスペースを作ると、そのスペースをトップ下の南野拓実(24)が巧みに利用する。後半8分の先制点は中島のクロスを南野がフリーとなって頭で決めたし、3分後の追加点も酒井宏樹(29)が1タッチで出したグラウンダーのクロスを南野がGKと1対1から流し込んだもの。

 日本のフィニッシュまでの流れにはスピードがあったことに加え、タジキスタンは前半のハイペースがたたったのか、戻りきれない場面も増えてきた。終わってみれば3-0の完勝で、終盤の決定機を永井や堂安が決めていれば6-0というスコアになった可能性もあった。日本の順当な勝利であり、前半のリスクマネジメントが功を奏した結果とも言える。

 ただし、森保監督の選手起用に関しては疑問がないわけではない。今回の2試合で森保監督は23名中、国内組の選手の招集は3人にとどまった。その後、室屋成(25)が追加招集されて4名となったが、J1リーグで優勝争いをしているFC東京(永井・橋本・室屋)は19日にアウェーで神戸と、横浜FM(畠中槙之輔[24])も同日ホームで湘南と対戦することになっていた。

 日本代表が帰国したのは17日。FC東京の3選手(実際には韓国代表のナ・サンホ[23]とU-22日本代表でブラジル遠征に参加した渡辺剛[22]=16日帰国も含めれば5選手)は、17日と18日の午前に練習後、神戸への移動となる。FC東京の長谷川健太監督(54)からすれば、帰国後の練習でコンディションを確認してからの起用となるだろうし、それは畠中慎之輔も同じことだ。

 優勝争いが佳境を迎えているだけに、国内組はモンゴル戦で解放して、タジキスタン戦はオール海外組ということも可能だったのではないだろうか。

 19日の試合でFC東京はヴィッセル神戸を3−1で下した。日本代表から戻ってきた橋本は先発、永井はベンチスタートとなったわけだが、結果オーライと結論を下すわけにはいかないだろう。

 次のアジア2次予選は11月14日、アウェーのキルギス戦だ。ただし、こちらは19日に予選の試合がなく、大阪・吹田でのキリンチャレンジ杯(ベネズエラ戦)だけに、23日のJ1リーグ第32節への影響は少なく済みそうだ。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年10月21日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。