神戸小学校教員いじめ事件に見る、教育現場の悪循環

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自分よりも弱い者へ

「小学校で生徒間のいじめが起こって、“加害者に対する指導が十分にできなかった”などと反省の弁を述べる先生たちがいますよね。でもそれは努力した結果じゃなくて、元々ムリな話なんですよ」

 と、こちらは現役の小学校教員の打ち明け話。

「他人をいじめる子どもがいる家庭には似たようなカラーがあって、親もいじめの“素質”をはらんでいることが多い。だから仮に校長や教頭が親を呼び出しても、“ウチの子の何が悪いのか”と執拗に責められ、逆に疑われたことを根に持って金銭を要求してきたりと、極めて異質な行状が見られる。いわゆるモンスターペアレンツですね。まともにかかわっていると担当の先生が病気になったり、退職や自殺に追い込まれたりするから、そういった親に対峙するのを最初から避ける傾向にある。もちろん熱心にやっている先生はいて、彼らには悪いけど、“易きに流れる”のが小学校の先生の宿命というところかな」

 先の片田氏は、

「小学生の子を持つ親たちは、家庭で躾をせずにそのまま学校に丸投げする人も少なくない。“教室で走らない、授業中は静かに座って聞く”なんてことから教えなければなりません。高学年になると、受験をする子たちは授業中ずっと“内職”していたり、寝ていたりする。その結果、“言うことを聞かせる、色んな子どもたちをまとめ上げる”といったことのウェイトの方が高まっているのです」

 と、小学校の指導現場が抱えるジレンマを描写し、

「そうなると、教科ごとの細かい指導力より、体育会的なノリの良さやブレない姿勢といったものの評価が自ずと高まる。また、超長時間労働やモンスターペアレンツ対応という仕事のブラック化に伴って休職率や離職率も高くなっていて、そういったストレスフルな仕事に耐えられる人だけがサバイブしていく。けれど、ストレスの根本原因を排除するのは難しく、怒りの矛先は自分よりも弱い者へと向かう。今回のように、若手の教師をいじめて溜まった怒りや欲求を発散しようとする。これを『怒りの置き換え』と言います。教育の現場はかなりの悪循環に陥っているように思えます」

週刊新潮 2019年10月17日号掲載

特集「目に激辛スープ! 屈辱シーンを撮影! 『陰湿イジメ』で仄見えた『小学校教諭』の『知られざる世界』」より

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